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株式分割で得られる恩恵とは?わかりやすく解説(資産形成イロハのイ)

記事公開日 2024/9/13 17:00 最終更新日 2024/9/17 08:43 経済・ビジネス コラム・インタビュー 資産形成イロハのイ 金融コラム

【QUICK Money World 辰巳 華世】1株だった株式が5株に増える。持ち株数がある日増えることがあります。これは株式分割によるものです。今回は株式分割の基本的な説明から株式分割のメリット・デメリット、株式分割が起こるタイミング、株式分割の権利を取得する方法、株式分割を行う理由、株式分割予定の銘柄について紹介します。

株式分割を説明する前に、最近のトレンドを少しご紹介しておきます。東京証券取引所は、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい最低投資金額(=株価×売買単位株式数)を「50万円未満」であるとの考えを示しています。

24年に開始となった新たな少額投資非課税制度(NISA)も企業の株価に対する考え方に影響を与えています。信越化学工業(4062)は23年3月末を基準日として1株を5株に株式分割しましたが、23年1月に株式分割を発表したプレスリリースに、新NISA制度が発足することも踏まえ、株式分割により個人投資家が投資しやすい環境を整え、投資家層の拡大を図ることを目的にする旨を記載しました。日本電信電話(NTT、9432)は23年6月末に1株を25株に株式分割しましたが、投資家層拡大を見据えて踏み込んだ動きでした。

株式分割とは

株式分割とは、読んだ通り株式を分割することです。1株をいくつかに分割し、発行済株式数を増やします。ただ、株式分割は、保有する株式全体の実質的価値に変化はありません

具体的な数字を入れて考えてみましょう。株価が3000円の株式について1株を2株に分割する場合、単純に試算すると分割後の株価は1500円になります。売買する際の売買単位が100株であれば、分割前は3000円×100株で最低投資金額は30万円となります。株式を2株に分割後の最低投資金額は、1500円×100株で15万円に低下することになります。同じ銘柄でも株価が3000円の時は、30万円で100株しか購入できませんでしたが、株式分割後の株価1500円であれば、同じ30万円(※手数料は考慮せず)で200株を買い付けることができます。

成長力がある銘柄や人気がある銘柄の株価は上昇する傾向が強く、あまりに株価が高くなってしまうと個人投資家が買いにくい状況になってしまいます。そういった時に株式分割が発表されると1株当たりの株価が低下し発行済株式数が増加するので、多くの投資家が取引できる機会が増えます

つまり、株式分割をすると流動性が高まります。株式分割によって一株当たりの株価が下がり、売買しやすくなります。例えば株価1万5000円の銘柄があったとします。この銘柄を購入するには1万5000円×100株で150万円が必要です。この銘柄が1株を5株に株式分割をすると、分割後の株価は1万5000円÷5=3000円と試算されます。最低売買単位100株を買い付けるために必要な金額は、3000円×100株=30万円となります。最低投資金額は株式分割前の150万円から分割後は30万円と5分の1に低下します。株式分割により株価水準が低下することで、より多くの投資家が購入しやすくなるので、流動性の向上が期待されます。

株式分割は一般的にポジティブな材料として受け止められることが多く、株式分割が発表されると株価が上昇する銘柄があります。これは、投資家層の拡大が期待でき、需給面での好材料と捉えられることなどが理由です。ただし、株式分割を発表したからと言ってすべての銘柄の株価が上昇するわけではありません。株価は様々な要因で変動します。その企業がこの先も有望な銘柄かどうかの見極めに加え、その時の相場環境など総合的に判断する必要があります。

 

株式分割のメリット・デメリット

株式分割のメリット・デメリットについて整理してみましょう。

メリット

株価が下がることで小口投資を促進しやすくなります。最低投資金額が下がると、これまで買いたくても買えなかった投資家が購入することができるので売買が活発になります。配当や株主優待狙いの投資家も取り込みやすくなります。流動性が高まり、結果として株価の上昇にも繋がります

配当を据え置いた場合、投資家は以前より多くの配当を手にすることができます。株式分割は2分割や3分割といった整数分割だけではありません。1株につき1.1倍、1.2倍割り当てるという分割もあります。1株当たりの配当に変化がない場合、投資家は配当10%アップ、20%アップと実質増配となります。

企業側から見ると、流動性の増加や株価上昇期待に加え、株主数の増加も見込めます。発行済株式数が増加し、株価が上昇すると時価総額も増えます。各市場は上場維持の基準を設けているので、上場企業にとって、株主数や時価総額の増加はとても大切なことです。ちなみに、東京証券取引所のプライムでは、市場で流通する株式比率(流通株式比率)が35%以上であること、流通株ベースの時価総額が100億円以上であることを上場基準としています。

デメリット

デメリットとしては、整数での分割でなく1.1分割や1.2分割だった場合、単元株未満(端株)がでてしまうことです。単元株未満の株式も企業に買取請求をすることで売却できますが、通常の市場での売却に比べ手間暇がかかります。

また、株式分割をしすぎると、株価が低くなり、株式市場において値が付かなくなってしまうリスクもあります。

株式分割が起こるタイミング

株式分割は会社法に則った決議が必要です。取締役会社設置会社は取締役会の決議、取締役会社非設置会社は株主総会の普通決議が必要です。

例えば取締役会社設置会社は取締役会で、分割の比率や基準日、株式分割のタイミングである効力発生日などを決定します。

企業が発表する株式分割については適時開示情報閲覧サービスや企業のホームページなどで確認することができます。

QUICK Money Worldでは株式分割に関する情報記事を閲覧できます。中には会員登録しなければ読めない記事があるため、ご興味がある方は無料会員に登録してみてはいかがでしょうか。 ⇒ 無料で受けられる会員限定特典とは

例えば、会員専用記事では「TOWA株が反発 1株を3株に分割、個人投資家の買いに期待」などの記事を読むことができます。

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株式分割の権利を取得する方法

株式分割の権利を取得するには、権利付最終日(権利確定日の2営業日前)の時点で、株式分割銘柄を買付けていれば、株式分割の権利を取得できます。投資家は、その後、特に手続きなどは必要ありません。権利を取得すれば、権利落ち日(権利付最終日の翌営業日)以降にこの株式を売却しても、効力発生日に新株が発行されます。

権利付最終日・権利落ち日・権利確定日とは

・権利付最終日:株主の権利を取得ができる最終取引日

・権利落ち日:株式を買付けても株主の権利を取得ができない日

・権利確定日:各企業が定める決算期末日や株主名簿を確定する日

株式分割を行う理由

株式分割は企業側にもメリットが多いです。株式分割によって株価が低下し購入しやすくなることで、株取引が活発になり、投資する人の増加が見込めます。需給面の改善から株価上昇期待もあります。

上場維持や上場市場変更の準備として株式分割をすることもあります。各市場には時価総額など上場するための基準が決められています。

株式分割で配当や株主優待の方針を変更することができます。分割前の配当や株主優待を維持すれば、投資家からみれば実質増配となります。配当や株主優待狙いの個人投資家を取り込みやすくなります

 

24年9月株式分割予定の銘柄を紹介

企業が発表する株式分割については適時開示情報閲覧サービスや企業のホームページなどで確認することができますが、ここでは24年9月に株式分割予定の62銘柄をご紹介します。
いずれの銘柄も、24年9月30日に、株式分割の権利確定日を迎えます。権利落ち日は9月27日、権利付最終日は9月26日です。

コード 銘柄名 分割比率 増加株式数 分割後株式数
142A ジンジブ 1:2 1,449,000 2,898,000
165A SBIレオス 1:8 90,389,600 103,302,400
1662 石油資源 1:5 217,200,304 271,500,380
1939 四電工 1:3 32,510,940 48,766,410
1946 トーエネク 1:5 77,319,960 96,649,950
2502 アサヒ 1:3 1,014,006,724 1,521,010,086
2585 ライフドリンク 1:4 39,194,898 52,259,864
2753 あみやき 1:3 13,697,600 20,546,400
3132 マクニカHD 1:3 121,714,764 182,572,146
3358 ワイエスフード 1:5 24,568,800 30,711,000
3431 宮地エンジ 1:2 13,838,908 27,677,816
3943 大石産業 1:2 4,664,000 9,328,000
4041 日曹達 1:2 28,393,867 56,787,734
4046 大阪ソーダ 1:5 106,928,068 133,660,085
4507 塩野義 1:3 593,088,130 889,632,195
4684 オービック 1:5 398,400,000 498,000,000
4887 サワイGHD 1:3 87,606,678 131,410,017
4980 デクセリアルス 1:3 120,384,400 180,576,600
5923 高田機 1:3 4,475,172 6,712,758
6016 JPNエンジン 1:3 5,600,000 8,400,000
6103 オークマ 1:2 33,755,154 67,510,308
6230 SANEI 1:2 2,289,000 4,578,000
6315 TOWA 1:3 50,093,704 75,140,556
6358 酒井重 1:2 4,407,817 8,815,634
6371 椿本チ 1:3 74,162,786 111,244,179
6557 AIAI 1:2 3,099,381 6,198,762
6594 ニデック 1:2 596,284,468 1,192,568,936
6737 EIZO 1:2 21,981,160 43,962,320
6758 ソニーG 1:5 4,994,478,356 6,243,097,945
6762 TDK 1:5 1,555,087,908 1,943,859,885
6845 アズビル 1:4 424,524,552 566,032,736
6946 日アビオ 1:5 13,411,848 16,764,810
6965 ホトニクス 1:2 165,083,770 330,167,540
6988 日東電 1:5 565,408,600 706,760,750
7259 アイシン 1:3 539,349,268 809,023,902
7327 第四北越 1:2 45,942,978 91,885,956
7367 セルム 1:2 12,909,400 25,818,800
7539 アイナボHD 1:2 11,647,820 23,295,640
7681 レオクラン 1:3 3,933,600 5,900,400
7686 カクヤスG 1:3 19,313,400 28,970,100
7698 アイスコ 1:2 1,945,150 3,890,300
7912 大日印 1:2 277,240,346 554,480,692
7949 小松ウオル 1:2 10,903,240 21,806,480
7951 ヤマハ 1:3 362,000,000 543,000,000
7979 松 風 1:2 17,894,089 35,788,178
8032 紙パル商 1:10 135,193,959 150,215,510
8088 岩谷産 1:4 175,684,947 234,246,596
8119 三栄コポ 1:4 7,658,838 10,211,784
8154 加賀電 1:2 28,702,118 57,404,236
8316 三井住友 1:3 2,634,794,168 3,952,191,252
8697 JPX 1:2 522,289,183 1,044,578,366
8951 日本ビルF 1:5 6,803,964 8,504,955
9037 ハマキョウ 1:4 57,036,000 76,048,000
9072 ニッコンHD 1:2 63,239,892 126,479,784
9087 タカセ 1:2 1,054,513 2,109,026
9434 ソフトバンク 1:10 42,805,806,930 47,562,007,700
9534 北ガス 1:5 70,951,224 88,689,030
9639 三協フロン 1:2 11,678,400 23,356,800
9735 セコム 1:2 233,299,898 466,599,796
9799 旭情報 1:2 8,264,850 16,529,700
9932 杉本商 1:2 11,399,237 22,798,474
9936 王将フード 1:3 46,572,460 69,858,690

まとめ

株式分割を行う理由の1つは、株式の売買をしやすくするためです。株式分割の発表は買い材料になることも多いので、注目してみましょう。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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