今週末の10月4日(金)、米国で9月の雇用統計が発表される。市場では米連邦準備理事会(FRB)が11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利下げを続けるとの見方は後退しているが、雇用統計が労働市場の軟化を示す内容になるようだと、9月のFOMCに続いて0.5%の利下げに踏み切るとの観測が強まりそうだ。この記事では、QUICK Money Worldの関連記事を中心に雇用統計のスケジュールや市場の予想などを解説する。
(10月4日 22時10分)
アメリカ労働省が10月4日に発表した9月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は25万4000人で、市場予想の14万人を上回った。8月は14万2000人だった。
失業率は4.1%で、市場予想の4.2%を下回った。8月は4.2%だった。
雇用統計の強い結果を受けて、円相場は円安・ドル高方向に上昇。22時13分現在、発表前の1ドル=146円40~50銭と比べて約2円ほど安い、148円40~50銭で取引されている。
米雇用統計とは?
米国の雇用情勢を調べた経済指標のこと。失業率、非農業部門雇用者数をはじめ、建設業雇用者数、製造業雇用者数、小売業雇用者数などの業種別雇用者数、週平均労働時間、平均時給などが米国労働省から発表される。失業率と、非農業部門雇用者数の増減は特に注目される指標の一つ。通常、翌月の第一金曜日に発表されている。
雇用統計はなぜ重要?
労働市場の流動性が高い米国では、景気動向によって就業者数が大きく変動する。米連邦準備理事会(FRB)がその使命に物価の安定とともに「雇用の最大化」を掲げていることもあり、金融政策を占ううえでも重要性は高い。
雇用統計は、いつ発表される?
9月の米雇用統計は今週末10月4日(金)の日本時間21時30分に発表される。
市場の予想は?
非農業部門の雇用者数は前月比15万人増と8月(14万2000人増)を上回り、失業率は4.2%で横ばいとなるとみられている。9月19日発表された週間の米新規失業保険申請件数は約4カ月ぶりの少なさとなっていた。これは9月12日を含む1週間のデータにあたり、9月の米雇用統計の調査週と一致するため労働市場の軟化懸念は和らいでいる。
モルガン・スタンレーMUFG証券の李智雄プリンシパル・グローバル・エコノミストは9月24日の報道関係者向け勉強会で、米雇用統計について「大幅悪化は考えていない」との見方を示した。
QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想によると、非農業部門の雇用者数は前月比14万人増え、増加幅は8月(14万2000人)とやや下回る見通しだ。失業率は4.2%から横ばいになると見込まれる。
9月の米雇用統計、非農業部門の雇用者数は前月比14万人増か QUICK・ファクトセット予想
気になる今後の見通しは?
4日発表の9月の米雇用統計を巡っては、失業率が市場予想から上振れするなど悪化した方が円相場の反応は大きくなると予想している。悪化した場合は円買い・ドル売りが増え、初期反応としては値動きは大きくなりそうだ。
9月の雇用関連指標の発表を契機に再びリセッション懸念が台頭してくる可能性がある点には注意が必要だ。米大統領選挙を前に先行きの不透明感を嫌って採用を抑制する動きなどに懸念を示す指摘もある。
FRBが政策を判断するにあたり、今後も雇用データが重要な材料となるという点で市場参加者の意見はおおむね一致している。大和の山本氏は「11月のFOMCまでに発表される米雇用統計で失業率が4.4%に到達するなど雇用悪化のスピード感が増してくれば、景気後退のリスクを再び市場が織り込み始める」と指摘する。パウエル議長が労働市場を減速させないとのスタンスを示すなかで、実際に失業率の悪化がみられると「11月か12月に0.5%の大幅利下げが視野に入るのではないか」という。
前回はどうだった?
8月の米雇用統計では非農業部門の雇用者数の伸びが市場予想を下回る一方、平均時給は市場予想を上回るなど、強弱が入り交じる結果となった。焦点となった利下げ幅への示唆は限らる内容だったが、FRBは9月17~18日に開いたFOMCで0.50%の利下げに踏み切った。
米景気の実態と米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和ペースを見極める上で関心を集めた米雇用統計。非農業部門の雇用者数は前月比14万2000人増と増加幅は7月の改定値(8万9000人)から拡大したものの、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(16万1000人増)には届かなかった。
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