11月5日の米大統領選まで1カ月を切った。連邦議会の下院全議席と上院の3分の1、州議会の上下両院、地方自治体の条例の投票も同時に実施される。選挙関連の郵便物が増え、州議会と条例関連のテレビ広告も急増。選挙が近いと意識させられる。
大統領選で「オクトーバーサプライズ」が注目を集める。選挙を控えた10月に発生するイベントが結果を左右するという意味だ。ワシントン・ポスト紙は、1980年の選挙で共和党候補レーガン氏が使った言葉が由来のオクトーバーサプライズによる恐怖、希望、最新情勢が、選挙戦を動かすようになったと解説した。ハリケーン「へリーン」の甚大な被害が投票に影響する恐れがあり、港湾労働者のストライキで民主党は一時パニック、中東情勢は一段と緊迫、2020年の大統領選の結果を覆そうとした事件で裁判所が特別検察官の申立書を公表したのはサプライズだったと伝えた。
ストライキは短期で終了。申立書公表の影響は軽微とみられるが、中東情勢と自然災害への対応は選挙戦の争点に浮上した。へリーンの死者は200人を超え、多数の住宅・インフラが被害を受け、自動車部品などサプライチェーンは混乱。ムーディーズ・アナリティクスによると、大統領選の激戦州を含む米南東部の被害額は340億ドル(約5兆円)を超す可能性がある。
民主党大統領候補のハリス副大統領は5日、ハリケーンの被害を受けた激戦州ノースカロライナを訪問、被災者に寄り添う姿勢をアピールした。共和党候補のトランプ前大統領は、暗殺未遂事件現場のペンシルベニア州バトラーで集会を開き、実業家イーロン・マスク氏も登壇した。CNNは、トランプ氏は「連邦緊急事態管理局(FEMA)の資金が不法移民を支援するため盗まれた」と根拠のない主張で現政権を非難したと報じた。現政権の中東政策については「Disaster(めちゃくちゃ)」と批判、自分なら戦争をすぐに終わらせるとも強調した。ハリス氏は希望を与え、トランプ氏は恐怖を想像させる発言が目立つ。政策も発言も対照的だ。
予想プラットフォームのPolymarketによると、6日時点でトランプ氏が勝利する確率は50.8%と、ハリス氏の48.4%を上回った。9月末までハリス氏が優勢だったが逆転。オクトーバーサプライズが一部影響したかもしれない。リアル・クリア・ポリティクスのまとめた最新世論調査では、全米ベースの支持率でハリス氏が2.2ポイント上回っているものの、激戦州のノースカロライナ、ジョージア、アリゾナでトランプ氏が優勢、ペンシルベニアでは支持率が並んだ。過去に例のない接戦になる可能性を示唆している。
さらなるオクトーバーサプライズが起きる可能性を排除できない。2016年の大統領選では、民主党候補者だったヒラリー・クリントン氏の私用メール問題で連邦捜査局(FBI)が捜査を10月末に再開、クリントン氏の敗北要因になったと指摘された。クリントン氏は「何が起きるかわからない」と警告した。4日に発表された9月の雇用統計は、「労働市場に景気後退の兆しはない」と題する社説をウォール・ストリート・ジャーナル紙が掲載するほど強かった。堅調な経済は現職のハリス氏に追い風。へリーンの影響が出るとみられる10月の雇用統計は選挙直前の11月1日に発表される。USニューズ誌は、米株式市場で選挙に関連したボラティリティーが高まるとアナリストが投資家に警告したと伝えた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。