米国とウクライナの首脳による激しい口論が世界に衝撃を与えた。ウクライナ戦争の和平につながる可能性があったが、新たな危機に直面した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、米大統領と世界の首脳の間で綿密に演出される交流の舞台である大統領執務室で、公に緊張が表面化した異例の瞬間だったと解説した。会談決裂を受け、問題修復のため欧州首脳はロンドンに集結。英フィナンシャル・タイムズは、英仏が新たな和平協定の策定を目指し、イタリアを含めた3カ国が米国に提案する計画だと報じた。
ホワイトハウスで国家安全保障を担当するウォルツ大統領補佐官は「ほぼ全員がウクライナとの交渉中止を進言した」とFOXニュースに明らかにした。会談決裂をめぐるネガティブな報道が目立つ。ワシントン・ポストは、「トランプ米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領を公然と威圧、米国の大統領というよりドン・コルレオーネ(マフィアのボス)のようだった」との社説を掲載。ジャーナリストのフリードマン氏は、ニューヨーク・タイムズのコラムで、米大統領が侵略者・独裁者のプーチン氏側にたったと主張した。
トランプ第1次政権の経験から、世界はトランプ氏の理解と合意を得る戦略を研究してきた。ウォール・ストリート・ジャーナルは、アップルのクック最高経営責任者(CEO)が、トランプ氏の政策課題の中で相互利益になる分野に絞ることで、多くの企業幹部が成しえなかったトランプ氏との個人的関係を築いたと報じた。別の記事で、欧州の首脳はトランプ氏にささやく技術を極めてきたと伝えた。ゼレンスキー氏に外交経験・スキルはないとの論評は多い。3年にわたりロシアとの戦争に向きあい、側近がトランプ氏との付き合い方を研究する余裕はない。英語力の不足も失敗を招いたとの指摘もある。
米大統領執務室での前例のない展開を受け、2月28日の米主要株価指数は下落に転じたが、すぐに持ち直し、ほぼ全面高で引けた。米国債利回りは低下。ドルは買われ、ユーロは売られた。ドル高基調で円は軟調。暗号資産(仮想通貨)は週末に急伸した。明らかに地政学リスクは高まったが、金融市場は教科書的な反応を示さなかった。関税問題などもからみ、ウクライナ問題はひとまず様子見ということか。和平努力がどう進展するか。投資家は注視している。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。