トルコリラの下落が止まらない。19日の外国為替市場では、対円で1リラ=26円台後半と過去最安値を更新する場面があった。国際収支の悪化に加え、国内外の政治情勢も重荷となり、まさに「内憂外患」が続く。一方で下げが続くなか、日本の個人投資家はなお買い持ち高を膨らませている状況だ。
前週以降、リラ売りを誘う材料が相次いでいる。まず、12日発表の1月の経常収支が71億ドルの赤字と、市場予想(69億ドルの赤字)を上回る結果となった。対外収支の悪化は実需のトルコリラ買いの減少を意識させ、リラの重荷となっている。
13日には選挙法案改正が注目を集めた。これまでトルコの選挙法では、得票率が10%に達しない政党の議席獲得を認めていなかった。今回の改正で、与党・公正発展党(AKP)の事実上の連立相手で、単独で10%を得票するのが困難視される民族主義者行動党(MHP)を救済。景気下支えのために低金利を選好するエルドアン大統領の権力集中が進むとの見方がリラ売りにつながった。
シリア情勢も重荷だ。18日にはエルドアン大統領がトルコ軍がシリア北西部アフリンの市街地中心部を「全面掌握した」と発表した。シリアへの軍事作戦はすでに2カ月続き、民間人犠牲者も出ているもよう。エルドアン大統領に対する批判が高まっており、リラ買いを手控えさせる要因となっている。
過去最安値更新が続くリラだが、日本の個人投資家は逆張り姿勢が鮮明だ。FX大手外為どっとコムによると、顧客のリラ円の買い持ち高は先週以降、過去最高水準で推移している。買い持ち高は今年に入り、16日までに2割以上増えた。週次でデータを公表している東京金融取引所のFX取引「くりっく365」でもリラ円の買い持ち高は過去最高水準にある。
やや長めのチャートでみると、リラ円は14年末の50円台からほぼ一本調子で下落している。ミセスワタナベの逆張りが報われる日が来るのかに関心が高まるが、今のところリラが反発する機運には乏しい。
【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】
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