外国為替市場でオーストラリア(豪)ドルやカナダドルといった資源国通貨が買われている。豪ドルの対米ドル相場は11日、1豪ドル=0.7773米ドルと約3週間ぶりの高値を付け、カナダドルも2月下旬以来の高値圏となった。原油高で他の資源価格が上がり、資源国通貨に波及した。同じ資源国通貨でもロシアルーブルは米国との対立懸念が強く、買いの対象圏外だ。
ニューヨーク(NY)原油先物は11日に1バレル67.45ドルと2014年12月以来、3年4カ月ぶりの高値まで買われた。米国によるシリアへの軍事介入が警戒され、中東の原油供給に支障が出るとの見方が原油買いにつながっている。日産証券の菊川弘之主席アナリストは「供給不安は足元までの原油相場にすべて織り込まれたとはいえず、NY原油先物で70ドル近辺への上昇も視野に入る」と指摘する。中東に地理的に近い北海ブレント先物にいたってはすでに73ドル台まで上昇している。
渦中のシリアの産油量は小規模で、主要産油国とはいえない。だが、同国のアサド政権の背後には産油国のイランの存在があり、米国との関係悪化が懸念されている。米国は15年にイランが米欧など6カ国と結んだ核合意を破棄し、米政府は議会に対イラン制裁再開の是非を報告する次の期限となる5月12日には再開に踏み切るとの見方が強まっている。制裁再開なら国際市場に出回るイラン産原油が減少し、需給の引き締まりが浮き彫りになる。
このため、外国為替市場で産油国通貨であるカナダドルに買いが入りやすくなるのは自然な流れだ。さらに原油高は、オーストラリアの主要輸出品である鉄鉱石の輸送費上昇につながる面がある。鉄鉱石価格の上昇期待が豪ドル相場を押し上げている。
資源需要のカギを握る中国経済は、成長率の鈍化傾向が続いているとはいえ「目先的な景気は堅調で、鉄鉱石や原油など資源需要につながる」(みずほ証券の五十嵐聡シニアFXストラテジスト)とみられている。中国の習近平(シージンピン)国家主席が10日に市場開放や自動車関税の引き下げを打ち出し、米国との貿易摩擦の激化懸念が和らいでいるのも中国の景気にとっては安心材料だ。
対照的に低迷しているのがロシアルーブルだ。ロシア経済は米国による追加制裁の悪影響への警戒感が強い。シリア情勢に絡んでも米国との対立関係が明確になってきた。ルーブルは対米ドルで1年4カ月ぶりの安値に沈んでいる。原油相場の上昇基調は、今後もルーブルを除く資源国通貨への買いを後押ししそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】
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