日銀が金融経済の解説などをするリポートで、このところ地方銀行の経営分析を取り上げる例が目立っている。日銀職員がまとめる「日銀レビュー」では、10日付で過去10年の間に地銀が設立した証券子会社が、グループの収益に貢献していることをまとめた。日銀の大規模緩和による超低金利が続いて経営環境が厳しい地銀に、構造改革を促す狙いがあるとみられている。
「日銀レビュー」は日銀の組織としての見解を示すものではないとの条件付きながら、「地域銀行の証券子会社の経営動向」と題した今回のリポートでは証券子会社の経営は「総じて軌道に乗りつつある」と分析した。証券子会社の連結ベースでの収益貢献度は大手行グループの5~10%には及ばないが、「2%程度になっている」という。
半年に1度日銀が公表する「金融システムリポート」では、地銀のガバナンス(企業統治)を巡って取引先などとの株式持ち合いの解消が進んだ結果、外国人株主比率が全体的に上昇していると指摘した。さらに外国人株主比率が高い地銀ほど「配当性向を引き上げる傾向がある」と分析し、配当原資を捻出するための無理な有価証券の売却は財務面に「悪影響を及ぼしかねない」との懸念を示した。
中曽宏副総裁(当時)は2017年11月の講演で、日本の金融機関について「非資金利益が業務粗利益に占める割合は国際的にみて総じて低い」と指摘した。収益源として融資や国債売買などの比率が依然として高く、証券取引の仲介など各種の手数料収入で稼げていないという意味だ。
福島銀(8562)の18年3月期決算は7期ぶりの赤字に転落するなど地銀の経営環境は厳しさを増している。欧米と異なり、日本では口座維持など銀行にとってコストのかかる金融サービスでも無料で提供しているものが多い。ある金融機関の関係者は「郵便局の存在が、国内では金融サービスは無料という意識につながっている」と指摘する。全国に支店網を持つ郵便局が預金などのサービスを無料で提供しており、競争するために民間金融機関も無料にせざるを得ないというわけだ。
地銀の構造転換は待ったなしで、証券子会社の拡大などは新たな収益源として有望といえそうだ。ただ、低金利に苦しむ地銀に関する日銀の分析は、緩和の副作用以外にも目を向ける必要があることを物語っている。
【日経QUICKニュース(NQN ) 矢内純一】
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