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FRB金利政策に影響か、米地銀危機で信用収縮 LA発ニュースを読む

ロサンゼルス西部のサンタモニカ。観光客や買い物客でにぎわうプロムナードのモールから2ブロック離れたガラス張りのビルに「SVBプライベート」のロゴ。破綻したシリコンバレーバンク(SVB)の富裕層向けサービス部門の支店だ。いわゆるプライベートバンク。ホームページを確認すると、ファースト・シチズンズのディビジョン(部門)と記載されていた。3月10日に破綻したSVBの預金や融資債権などは地銀ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズが引き受けることで連邦預金保険公社(FDIC)と合意したが、SVBの名称はまだ使っているようだった。

SVBプライベートが入居するビルから北方向に5分ほど歩くと地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の支店がある。FDICは今月1日、FRCが経営破綻し、公的管理下に置いたと発表。同時に米銀大手JPモルガン・チェースがFRCの全ての預金と資産を買収するとも発表した。リーマン・ブラザーズが破綻した約2週間後の2008年9月25日、ワシントン・ミューチュアル・バンクに業務停止命令。米国史上最大の銀行破綻になった。入札でJPモルガン・チェースがワシントン・ミューチュアルの大半を取得。JPモルガン・チェースは米国で破綻した最大規模と2番目の規模の銀行を買収したことになる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米最大の銀行であるJPモルガン・チェースの店舗が全米のいたるところにあるが、さらに拡大する方向にあると報じた。買収したFRCに加えSVBとシグネチャー・バンクの破綻で地銀の預金が大量流出する危機に陥ったが、JPモルガン・チェースは一段と強固になったとしている。ヒューストン、ニューヨーク、シカゴなどの大都市で預金残高トップ、ロサンゼルスはバンク・オブ・アメリカとウェルズ・ファーゴと合わせた大手銀3行で預金全体のほぼ半分を占めていると伝えた。

ブルームバーグ通信によると、JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は、16日に開かれた年次株主総会で、銀行業界の混乱で苦境に陥っている米地銀をこれ以上買収する可能性は低いと述べた。地銀業界が「安定を取り戻す」と期待していると語った。その2日後の18日。イエレン米財務長官は、ダイモン氏やシティグループのフレイザーCEOら大手銀トップとの会合で、さらなる銀行合併が必要になるかもしれないと話した。CNNが匿名の関係者2人を引用して報じた。

フィナンシャル・タイムズ紙は19日、CNNの報道を受け米地銀行が大幅安で推移したと報じた。KBW地銀指数は2.2%下落したとしている。CNBCは、連邦債務上限交渉の不透明感が強い中でイエレン財務長官の発言が伝えられ、パックウエストやウエスタン・アライアンスなど地銀株が売られ、週前半の上昇分の一部を削ったと伝えた。

米連邦準備理事会(FRB)が8日発表した上級貸出担当者を対象にした調査(SLOOS)で、大・中規模企業向け融資基準を引き締めた割合は差し引き46%と、1月調査の44.8%から上昇した。1990年、2001年、2007年、2020年は50まで上昇、米経済はリセッション(景気後退)に陥った。注目された「50」に届かず、急激な信用収縮ではなかったが、FRBの利上げと銀行危機が融資厳格化を招いたと指摘された。FRBのパウエル議長は、信用収縮が金融政策に影響を与える可能性に言及。CNBCが19日に中継したワシントンのイベントで、銀行システムのストレスを理由に「政策金利をそれほど引き上げる必要がないかもしれない」と述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、金利据え置きの可能性を示唆したと報じた。

ダラス地区連銀のローガン総裁をはじめFRB高官のタカ派発言が相次ぎ、市場では6月13~14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%利上げの可能性があると見方が再浮上。10日発表された米消費者物価指数(CPI)を手掛かりに利上げ停止がコンセンサスになったが、CMEグループの「フェッドウォッチ」が示す6月利上げ確率は40%近くまで上昇した。パウエル議長がタカ派に属さないことを示したことで、据え置き確率が大幅上昇、利上げ確率は20%を再び割った。目まぐるしく動き、市場がFRB金利政策にいかに敏感かわかる。

スタンフォード大学院で金融を教えるアミット・セル教授は、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文で、商業不動産への融資焦げ付きリスクが大きいと指摘、銀行危機に備えるべきと主張。ショート・ヒルズ・キャピタルを率いるスティーブ・ヒルズ氏は、CNBCのインタビューで、米地銀危機はまだ終わっていないと警告した。銀行リスクは後退したと投資家の一部は楽観的だが、銀行と融資基準、FRBをめぐる観測・思惑が市場に引き続き影響しそうだ。 

 

(このコラムは原則、毎週1回配信します)

福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。

著者名

松島 新


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