外国為替証拠金取引(FX)を手掛ける国内の個人投資家「ミセスワタナベ」によるトルコリラなど新興国通貨への買いが鈍っている。米長期金利が3%前後で高止まりするなか、対外債務を抱える新興国の通貨は対米ドルを中心に先安観が強い。相場の流れに逆らう「逆張り」で知られるミセスワタナベは積みあげている買い持ち高で含み損を抱え、身動きがとりづらいようだ。
主要先進国よりもはるかに金利水準が高いトルコリラ。下落に歯止めがかかっていないにもかかわらず、ミセスワタナベの人気は特に衰えていない。ただ、リラ安を好機と捉えた「押し目買い」も程度問題だろう。利息収入は一朝一夕には増えないので、下落局面にあるリラを買えば買うほど含み損が膨らみ、新たな取引に使える証拠金も当然目減りしていく。
トルコは現在、シリア情勢の悪化と経常赤字の拡大という「内憂外患」に直面している。エルドアン大統領が中央銀行に利下げを促す姿勢を示したのを受け、リラは日本時間15日午後に史上最安値を更新。1ドル=4.3リラ台後半と、年初の3.80リラ前後から13%ほど安い水準だ。銀行間(インターバンク)市場では早い段階で「アルゼンチンペソとトルコリラは最も買いづらい通貨」というのが常識だったが、ミセスワタナベはあらがうようにリラを買ってきた。その流れが、ここにきてよどんでいる。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「個人投資家のリラ買い意欲は明らかに後退している」と指摘する。外為どっとコムのデータによると、トルコリラの買い持ち高は4月以降、18億円程度のままでほとんど変わらない。リラは4月以降も下落しているため、新規の買い持ち高の伸びが鈍いことを示している。
セントラル短資FXの水町淳彦市場部長は「売りが売りを呼ぶような状況ではない」と前置きしたうえで、「買い意欲の衰えは否定できない」という。リラの下落により証拠金が目減りしている一方、10%近い金利収入の魅力は根強く、金縛りにあっているようだ。いわゆる「塩漬け」の持ち高が膨らんでいると受け取れる。
【日経QUICKニュース(NQN)荒木望】
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