24日投開票されたトルコ大統領選は、現職のエルドアン大統領が再選される見通しとなり、同時実施の総選挙でもエルドアン氏率いる与党・公正発展党(AKP)主導の政党連合が総議席の過半数をとった。日本時間25日朝の外国為替市場ではトルコリラが上昇。1リラ=23円台後半と前週末22日のニューヨーク市場の終値である23円台前半よりも高くなった。政治的な安定が強まるとの見方が主に対米ドルでリラの買い戻しを誘い、円売り・リラ買いに波及した。
国営のアナトリア通信によると開票率98%時点(日本時間の25日8時時点)でエルドアン氏の得票率は52%と、最大野党・共和人民党(CHP)のインジェ氏の30%を大きく引き離している。過半数を得て決選投票にもつれ込むことなく終わる可能性が高い。定数600の議席を争う総選挙でも、AKPと連立相手の民族主義者行動党(MHP)の2党で300超の議席を得る見込みだ。
選挙結果を受けたリラ高について、野村証券の中島将行・外国為替アナリストは「政治勢力のねじれによる国会の混乱が避けられ、市場参加者はひとまず好感したようだ」と分析する。エルドアン大統領の再選はもともと有力だったが、総選挙で与党連合が過半をとれるかは不透明だった。このため、議会も与党が制したことを「政治停滞のリスクは避けられた」と安堵する空気はそれなりに強い。
問題はエルドアン氏の今後の出方だ。選挙前の5月中旬、エルドアン大統領は再選のあかつきには中央銀行への統制を強めると語っていた。景気浮揚を目的に中銀に金融緩和を促すとの懸念はぬぐえない。外為市場の参加者の大部分は、長い目で見たリラ安のシナリオを引き続き維持している。
アナトリア通信によると、エルドアン大統領は今後、選挙での勝利を受け、首都アンカラの党本部で演説に臨む。イスタンブールからアンカラに向かう前に「私たちはいつも国民の支配者ではなく、奉仕者だった。国民はこれに気づいていて、52%が支持を示してくれた」と語ったという。
では、エルドアン大統領は中銀に対しても支配者ではない姿勢を見せてくれるのか――。市場参加者は懐疑的な目で見守っている。
〔日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一〕
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