原油価格が1年ぶりの安値圏で推移するのに伴い、市場の期待インフレを現すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も低下している。QUICK FactSet Workstationによれば14日に200bpsとなり、1月以来、10カ月ぶりの低水準を付けた。
この日発表された10月の消費者物価指数(CPI)は+0.3%、コアCPIは+0.2%となり、それぞれ市場予想に一致。エネルギー価格の上昇による影響が大きかったが、足元でWTI原油先物相場が1年ぶりの安値水準にある中、今後はガソリン価格が低下すると見込まれる中でBEIは低下する流れとなった。バークレイズは14日付のリポートで、「エネルギー需要は10月のCPIを押し上げたが、2019年にはインフレ率の上昇に逆行する形でエネルギー価格がインフレの抑制要因になると考えている」と指摘した。
なお、全米自動車協会(AAA)によれば14日時点の全米ガソリン販売価格の平均値は1ガロン=2.677ドルとなった。3ドルを超えている週もあるが、10月以降はWTIの下落基調や需要減を受けて下落トレンドにある。
(QUICK FactSet Workstationより、13日時点)
こうしたなかで目を引くのが、激しく「逆行高」している天然ガス先物の値動きだ。
14日の米国市場で中心限月12月限の清算値は前日比0.736ドル(17.94%)高の100万BTU(英国熱量単位)あたり4.837ドルとなった。13日も冬本番を前に暖房需要期待から8.26%高で急伸しており、天然ガスとWTI原油先物の乖離が大きくなっている。著名金融ブログのゼロ・ヘッジによれば、天然ガスを運ぶためのパイプラインがない北東部で昨年は価格が高騰した経緯があったという。
CMEグループは14日、13日の天然ガス先物の売買高が123万2635枚となり、今年1月12日に記録していた過去最高(102万2858枚)を更新したと発表した。WTI原油先物のオプションもこの日は69万3975枚で2016年11月30日に記録した過去最高水準を更新したといい、原油や天然ガスが荒い値動きとなる中、先物やオプションの取引が活発化している。(片平正ニ)
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