QUICKイノベーション本部=吉田晃宗
ソーシャルレンディングとも呼ばれる貸付型(融資型)クラウドファンディング業界で、貸付先情報を開示する「匿名化解除」の動きが始まった。海外向け特化の貸付型クラウドファンディング事業を運営するクラウドクレジット(東京・中央)も、7月19日から情報公開をスタートした。杉山智行社長に、匿名化解除の取り組みと今後の展開について聞いた。
ネット融資仲介「貸付先の非匿名化は歓迎」 クラウドクレジット杉山社長(3/22配信)はこちら
――匿名化解除の進捗と貸付先の反応はどうですか
「貸付先のほぼ全社から社名開示の同意を頂いており、手続きが完了して情報公開が可能となったファンドから順次発表しています。成長国の成長企業にお金を届ける、という投資哲学を貫いてきたため、企業名や経営者を公開することに抵抗はまったくありません」
「匿名化解除は貸付先企業も希望していたことで、情報開示によって、投資家に事業内容や経営陣についてより詳しく理解してもらうことを期待しています。今後は、貸付先企業を招いたセミナー等も予定しており、投資家に貸付先企業をより知ってもらうための施策も実施したいと思っています」
――投資家にもメリットが大きいと?
「2つのメリットを得られると考えています。ひとつは、当社の場合は英語にはなってしまいますが、投資家がインターネット上の公開情報を用いて独自に案件の実在性を調査することができます。また、自分の投資したお金を誰がどのように使い、社会にどういう付加価値が創出されたかが明確に分かるようになります。貸付型クラウドファンディング業界がようやく本来のあるべき姿に戻り、『クラウドファンディング2.0』が始まったと言えます」
――今後の課題、テーマは何ですか
「累計出資金額は210億円、運用残高は120億円、ユーザー登録数は約4万に迫っています。おかげさまで、この6月には単月黒字化を達成しました。海外向けソーシャルレンディングは分散投資によってリスクを抑制できますので、投資家に一層の分散投資を促す機能を順次実装していきたいと思っています」
「業界の目標として次のステップは税制改正でしょうか。現在、ソーシャルレンディング投資における利益は分離課税の対象ではなく、雑所得扱いです。一定の透明性がある金融商品として、今後は株式や投資信託の利益と同様な扱いになるよう業界として働きかけていくことも考えています。実際、イギリスでは、ソーシャルレンディングは分離課税どころか(NISAのモデルとなった)ISAの対象となっています」