NQN香港=桶本典子
中国・上海株式市場の一角で「石油より酒」の構図が繰り広げられている。白酒メーカーの貴州茅台酒が30日も上場来高値を更新。好業績と健全経営で知られる同社の人気ぶりは、安値圏に沈む国有石油最大手・中国石油天然気(ペトロチャイナ)の時価総額を上回るほどだ。ペトロチャイナの時価総額の約1兆1200億元に対し、貴州茅台酒は約1兆4300億元。世界有数の時価総額上位企業として知られてきたペトロチャイナにとって代わる存在感を示している。
ペトロチャイナは川上・川下分野を総合的に手がける中国の国有石油最大手。しかし、株価は26日に一時6.02元と、2007年の上場以来の安値を更新。年初から29日までの下落率は16%にのぼり、同期間に上海総合指数が16%上昇したのと対照的だ。悪材料としては、国際原油先物相場の低迷のほか、親会社の中国石油天然気集団(CNPC)が8月にベネズエラに対する米制裁の影響を警戒し、同国産油の積み出しを停止したことなどが挙げられる。3月には、CNPCの元幹部が中国政府に拘束される事件も起きた。
これに対し、貴州茅台酒は今や押しも押されもせぬ人気銘柄の1つ。17年から品薄を背景に製品が投機の対象にもなっているという。
株価は6月に節目の1000元を上回った。中国メディアによると、株価が1000元を超えた銘柄の出現は、中国の人民元建て市場では1992年以来27年ぶりで、史上3社目という。日本円にして21兆円規模の貴州茅台酒の時価総額は、本拠である貴州省の2018年の域内総生産(GDP、1兆4806億元)にほぼ肩を並べ、トヨタ自動車(約22兆7000億円)に迫る水準。世界ランキング(29日時点)では47位と、ファイザーやアンハイザー・ブッシュ・インベブ、ペプシコなどより上に位置する。
機関投資家の間では「ポートフォリオ組成に当たり、ペトロチャイナのような古くからの大型株ではなく、ハイテクや消費のような『新経済』関連が年々好まれやすくなっている」(海納資産管理の周梓霖シニア・インベストメント・マネジャー)との声が聞かれる。特に時価総額を目安に作成する場合は、貴州茅台酒のような躍進めざましい消費関連を取り込みたくなるのは自然だろう。
もっとも中国には「酒能成事、酒能敗事」(酒で事を成し遂げることもあるし、失敗することもある)との故事成語があるようだ。貴州茅台酒ブームがいつまで続くのか、悪酔いしないで済むかどうかも気になるところではある。
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