止まらないグローバル化の流れが日本独自の雇用の仕組みを変えていきそうだ。QUICKが17日にまとめた5月のQUICK短観で、経団連と大学側が合意した新卒の通年採用の拡大への賛否を聞いたところ、8割の企業が「支持する」「すでに導入している」と回答した。
新卒の通年採用を巡っては、4月に経団連と大学が拡大の方針で一致した。「導入はしていないが支持する」とする回答が59%あり、「既に導入している」も20%あった。経団連の中西宏明会長は「経済界はいわゆる終身雇用なんて守れないと思っている」と述べており、現行の就活ルールは今後廃止されることが決まっている。
背景には企業がグローバル競争の波に洗われていることがある。通年採用が一般的になっている海外の企業と人材を取り合うことが増え、4月一括採用の方式がうまく機能しなくなってきた。賛成の企業からは「当然の流れ」との声が出ている。通年採用の仕組みがあると、時期を限定せず、外国人留学生や日本人の留学生の中からも優秀な人材を確保しやすくなる。
日本の就職活動の現状を「既に通年採用に近い」と評する企業もあった。就職活動は年々早期化、長期化しており、経団連の定めた「就活ルール」の形骸化に不満を持っていた企業は多いようだ。通年採用の実施を機に就活スタートの時期を自由に選べるようになれば、採用戦線はいっそう熾烈になる可能性もある。
通年採用の実施を歓迎しないのは採用コスト増を嫌う中小企業だ。「ずっと採用を続けられる通年採用は大企業に有利」と懸念する。ある企業は、今後の採用難を見越し「自社の魅力をいかに伝えるか、今まで以上に課題になる」と指摘していた。
5月のQUICK短観は4月25日~5月14日に調査を実施。上場企業320社が回答した。(ナレッジ開発本部 伊藤央峻)