QUICK編集チーム=伊藤央峻、写真=Carsten Koall/Getty Images
外国為替市場が英国の欧州連合(EU)離脱の混乱など山積する欧州のリスクに身構えている。景気と物価の下支えを狙い、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和にカジを切った。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した市場関係者への調査では、こうしたリスクや金融政策を映し、ユーロやポンドの下落を予想する見方が目立った。
欧州リスクで関心が高いのは「英のEU離脱」が52%と最も多く、「ドイツの景気」(23%)や「ECBの金融政策」(18%)が続いた。ほかに政局が不安定なイタリア、米国とEUの通商問題、ポピュリズムの拡大などがあり、米国や日本と比べて逆風要因が多い。
英のEU離脱は時期を3カ月延ばす法案が可決されたが、EUが受け入れるかどうかは不透明。10月の離脱に固執するジョンソン英首相の出方も読めない。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「合意なし離脱の可能性はまだ高い」と指摘する。調査では、その場合「ポンドは5~10%下落する」との見方が半数に上る。現在の1ポンド=1.2ドル台から1.1ドル台に下がる計算で、唐鎌氏は「1.2ドル割れが定着し、1985年の史上最安値(1.052ドル)に近づく」と警戒する。
米中摩擦、中国経済減速のあおりで4~6月期に実質マイナス成長となった「エンジン役」ドイツはどうか。調査で7~9月期も成長率が大幅または小幅マイナスとの予想は合計6割に達した。
ドイツの10年国債利回りは現在マイナス0.5%程度だ。景気回復が遅れ、金融緩和も再開された状況では一段と金利が下がりやすい。1年後の利回りについてはマイナス0.8%の予想が最多で、最も低い予想値はマイナス1.3%だった。
ECBの政策発表後、ユーロは一時1.09ドル台前半まで売られた。調査回答者の6割以上が10月から来年1月にかけて安値をつけると予想。水準としては今後1年で1.05ドル(最頻値)までの下げを想定している。
トランプ米大統領が再選に向けて景気対策を発動すればドルはさらに買われる可能性がある。マネーパートナーズの武市佳史チーフアナリストは「来年半ばに1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)が視野に入る」とみる。
調査は9~11日に実施し、回答は91人だった。(9月15日付 日経ヴェリタスより)