日経QUICKニュース(NQN)=末藤加恵、中山桂一、北原佑樹
国内証券業界に証券取引の手数料ゼロ化の波が押し寄せている。米ネット証券大手が10月に株式売買の手数料を相次いで撤廃したのを受け、SBIホールディングスなど大手ネット証券5社がそろって無料化に動き始めた。個人投資家が裾野が拡大すると歓迎の声が上がる一方、証券会社の体力が一段と消耗すれば、個人が不利益を被る結果につながりかねないとの懸念もある。
3~4日にマネックス証券や楽天証券、SBI証券が投資信託や信用取引の一部の手数料を無料にすると発表。auカブコム証券などに続いた。さらにSBIやauカブコムは現物株の手数料無料化の検討にも踏み込んでいる。現物株や投信は初心者の個人投資家も手がけやすく、これまで投資になじみのなかった層を取り込む効果が期待される。
国内のネット証券は米国の同業に比べ、収益全体に占める株式などの売買手数料の比率が高い。SBI証券は2018年度に純営業収益の5割近くを売買手数料などの「取引からの収益」が占めた。松井証券は6割近くに達する。一方、手数料ゼロ化競争の口火を切った米ネット証券最大手のチャールズ・シュワブは取引からの収益が1割に満たない。米国では個人金融資産の約半分をリスク資産が占めるのに対し、日本は1割強にとどまり投資額の規模も小さい。
IT(情報技術)技術の発展に伴い、国内ネット証券は個人向けにかつてのプロトレーダー並みの取引ツールの開発や情報発信も手掛けている。リブラ・インベストメンツの佐久間康郎代表は「新サービスに向けたシステム開発やメンテナンスの費用に充てるべき収入を確保できないとなれば、結局は投資家の不利益となって跳ね返ってくる可能性がある」と指摘する。
金融資産が1億円超の「億り人」投資家のかぶとーきょーさん(ハンドルネーム)は「すでに株式売買手数料は十分低い。トレードの損益額の方が大きいため、手数料を気にすることは少なく、無料化のメリットは小さい」と冷静だ。それよりも新たな収益源を確保する一環で「3%前後の信用取引金利を米国並みの8%前後まで引き上げるといったことになれば、個人は不利な状況に置かれる」(「億り人」投資家の村上直樹さん)との声も聞かれる。
今後、手数料収入に代わる収益源が育たず、証券会社の体力が一段と弱れば、投資家にとってもプラスにならない。リブラの佐久間氏は「質の高いサービスに見合った合理的な手数料体系や透明性の高い効率的な市場の整備こそ、投資家が望んでいることだ」と強調する。
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