QUICK編集チーム=伊藤央峻
円の対ドル相場が上にも下にも大きく動きにくくなっている。今年の最高値と最安値の差は8円程度で、このままいくと過去最小になる可能性が出てきた。リスク回避でドルと円が同時に買われるようになった、世界的な金利低下で高金利通貨に資金が集まる構図が変わった、など様々な見方がある。QUICKと日経ヴェリタスの共同調査(11~13日、回答95人)では、年内はレンジ内での動きにとどまるとの予想が大勢だった。
年内のドル円相場どう動く
年末にかけての値動きは「レンジ内で円安方向」が39%、「レンジ内で円高方向」が32%で、どちらかというと円安を想定した見方が優勢だ。「今の水準で小動き」は23%だった。
ドル円相場の値幅が出ない原因については「世界の金利低下による金利差の縮小」(43%)の回答が最も多い。SMBC日興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストは「各国の成長率やインフレ率が頭打ちになり、金利差が縮小し魅力的な通貨を求める売買が鈍っている」と指摘。その裏返しで、リスク回避局面での円への資金の戻りも限られてきたとみている。
「ドルと円がリスク回避先として同時に選ばれる」は31%、「企業の海外生産移転などで輸出入が均衡」が8%、「HFTなど機械取引の増加」が7%。ほかに「先進国の金融政策は大同小異なうえ、フォワードガイダンスにより相場へのサプライズが少なくなった」、「投機筋のドル円離れ」を挙げる声もあった。
こうしたレンジ相場を突き抜ける材料は何かを聞いたところ「米中の通商交渉」と「米国経済と金融政策」への注目が高いことが分かった。米中交渉が合意に至ったり、米経済が力強さを回復して再び利上げ姿勢に転じたりしたら明確なドル高・円安になり、逆の場合はドル安・円高というシナリオだ。
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。