QUICK Market Eyes=片平正二、大野弘貴
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟国は6日、ウィーンで閣僚級会合を開いた。減産量を追加する案や、3月末に期限を迎える現行の枠組みの延長についても協議したが、決裂した。
日本時間の9日朝、ニューヨーク原油先物は一時1バレル30ドルまで急落。4年ぶりの安値水準をつけた。
アラムコの株価が初の公開価格割れ
8日のサウジアラビアのタダウル市場で、2019年12月に新規株式公開(IPO)を果たしたサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの株価が急落した。公開価格の32リヤルを初めて下回り、6日終値比で9.09%安の30リヤルで終えた。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国を加えた「OPECプラス」の協調減産の交渉決裂に伴い、原油価格が急落したことで売りが殺到した。サウジアラビアのタダウル全株指数(TASI)も8%超の急落となった。
■今後の原油先物相場は?
野村証券は9日付リポートで「現行の減産期間が終了する20年4月以降の世界原油需給は見通し難いが、ロシアの予算編成前提を下回る30ドル台後半(北海ブレント)が当面の下値目途となる可能性がある」と指摘。「30ドル台後半を下回る状況が続けば、6月9日の次回会合でロシアも減産に同意する可能性が意識される」との見方を示した。
SMBC日興証券は、「世界の原油需給バランスの供給過剰リスクが高まり、原油価格がさらに下落する可能性を示唆している」と指摘。今後について、「(1)新型コロナウイルスによる景気減速を背景とした原油需要の減少リスク、(2)サウジアラビアなどのOPEC加盟国やロシアなどの産油国の原油生産量の増加リスク」が注目点であるとした。
またオーストラリア・ニュージーランド(ANZ)銀行は9日朝、顧客向けメモで以下のような見解を示していた。
「市場は、米国が新型コロナウイルス(COVID-19)への危機対応と予防策の展開が遅れていること、封じ込め政策に関する透明性が欠如していること、公衆衛生上のコミュニケーションが貧弱であるとみられることなどを懸念している。トランプ米大統領は83億ドルの緊急対策に署名したが、景気刺激策が必要かどうかはわからないと述べた。米国のペンス副大統領は、検査キットが十分ではなく、公衆衛生へのアクセスに対する懸念が高まっていると述べた」
「欧州は先週末、思い切った隔離措置を取った。現在、イタリアの約4分の1の地域が隔離されている。これらの動きは、すでに弱いユーロ圏の経済成長に著しい影響を与えるだろう。欧州中央銀行(ECB)は今週、金融緩和に踏み切ることが予想される」
「世界的に、政策立案者たちは世界的な景気減速に対応して段階的に進もうとしている。ニュージーランドに対しては、短期的なGDPの下押しだけでなく、長期的な景気減速のリスクにも直面している」
「ニュージーランド準備銀行(RBNZ)も政策金利引き下げが予想されている。迅速かつ大規模な行動が喫緊の課題だ」
「6日、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国を加えた『OPECプラス』では、減産量を追加する案や、3月末に期限を迎える現行の枠組みの延長について協議したが、合意できなかった。COVID-19の影響が拡大する中での交渉決裂だ。市場は需給の大きなショックの影響を予想しており、今後数日のうちに、原油価格に下方圧迫が強まることは間違いない」