QUICK Market Eyes=池谷信久
27日の米市場でダウ工業株30種平均の上げ幅が連日で500ドルを上回り、戻り基調を一段と強めている。経済活動の再開に対する期待感が米株式相場を押し上げている。マインドの改善は経済指標にも現れ始めたうえ、米連邦準備理事会(FRB)の政策が追い風になっているようだ。
■製造業の景況感は底入れ
同日に発表された5月米リッチモンド連銀製造業景況指数はマイナス27と、過去最低となった4月のマイナス53から改善し、QUICK FactSet Workstationによる市場予想マイナス38を上回った(緑線)。26日発表の5月のダラス連銀製造業活動指数もマイナス49.2と4月(マイナス74.0)から上昇し、市場予想(マイナス65.0)を上回っていた。
段階的な経済活動再開により製造業のセンチメントは持ち直している。6月1日に発表される米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数の予想は43.5と4月の41.5から上昇が見込まれている。
米連邦準備理事会(FRB)が27日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、雇用情勢の急速な悪化などを受け米経済は「新型コロナウイルスによって、大半の地域で急激に悪化している」と判断している。ただ、製造業のセンチメントには底入れ感が出始めているようだ。
■FRBもYCC
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は27日のテレビインタビューで、米連邦準備理事会(FRB)が「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の検討を始めたことを明らかにした。「すでに導入している国の評価に加え、米国でどのように機能するかを分析している」という。
日銀は「実質金利」を引き下げる手段として2016年にYCCを導入した。金融緩和によって期待インフレ率を引き上げるとともに、YCCによって名目金利の上昇を抑制することで実質金利(名目金利-期待インフレ率)を押し下げ、需給ギャップを改善させるというメカニズムだ。
米国の実質金利はすでにマイナス圏にある(黄棒)。YCC導入によって名目金利(緑線)の上昇が抑えられれば、期待インフレ率(青線)の上昇とともに金融緩和効果は加速することになる。米国では経済活動が段階的に再開されており、期待インフレ率は回復しやすい。YCC導入は市場の景気回復期待を高める要因になるかもしれない。