英個人投資家はESG(環境・社会・企業統治)要因を金利見通しよりも重要な考慮事項とみている――。英国のESG情報サイトが実施した調査でこんな結果が明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、従業員の働き方改革や健康管理といった社会面の取り組みが注目されるようになり、ESG要因に強い関心を示す投資家が増えてきたようだ。
■英個人の重視事項、ESG>金利見通し
ESGクラリティが英金融サービスのハーグリーブス・ランズダウン(HL)の顧客560人強を対象に実施した調査で、投資決定の際に①経済見通し②金利見通し③政治情勢④株価水準⑤ESG――の5項目についてどのくらい重要視しているか聞いたところ、「重要」との回答が最も多かったのは「経済見通し」で442人(79%)だった。「ESG」が重要と答えた人は336人(60%)と「経済見通し」には及ばなかったものの、「金利見通し」の295人(52%)を上回る結果だった。
■コロナ禍で「ESG」に注目、株価にもたらす影響も
コロナ禍を受けて世界の中央銀行がそろって利下げに動き、金利が低水準で推移していることが「金利見通し」への関心を薄めた可能性がある。一方、ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保やリモートワークを推奨する動きが広がり、労働環境課題への企業の取り組みが注目されたことで、投資においても「ESG」の観点が選択肢として重みを増したことは間違いない。
HLは「投資家はESG問題が企業の株価にもたらすリスクを認識している。伝統的な投資スタイルのファンドマネジャーでさえ、ESG要因を無視するリスクに目覚めている」と指摘している。
■ESGファンド、4月の資金流入額が過去最高に
英国投資協会(IA)によると、2019年は英個人投資家の「株式ファンド」への資金流出入額が26億ポンド(約3520億円)の流出超となるなか、ESG課題に積極的に取り組む企業に投資する「責任投資ファンド」は32億ポンド(約4256億円)の流入超となった。
「責任投資ファンド」は20年1~4月の4カ月間ですでに24億ポンドの買い越しを記録し、4月だけで9億6900万ポンドの流入超と単月ベースの過去最高を更新した。「ESG」に対する関心が高まるにつれて、今後さらに関連ファンドへの資金流入の勢いが強まりそうだ。
(QUICKリサーチ本部 荒木朋)