東証が9月10日に発表した日本の上場不動産投資信託(J-REIT)、8月の投資部門別売買状況によると海外投資家が523億円を買い越して最大の買い主体となった。海外勢が買い越しに転じるのは3月の343億円以来、5カ月ぶり。買い越し額としては19年9月(705億円の買い越し)以来の大きさとなった。その他の買い主体は生保・損保の47億円だった。
一方、投資信託が259億円、個人が253億円、銀行が52億円をそれぞれ売り越した。
■オフィス市場の変化に関心
みずほ証券は10日付リポートで「新型コロナウイルスによる減配リスクの後退で商業施設やホテルと言った割安REITへの資金シフトが加速した」との見方を示した。一方、「リバウンド一巡後は、中長期的な実物不動産市場の見通しへと市場の焦点は徐々に移る」とし、「特に、調整リスクが大きいオフィス市場の動向は注視を続ける必要がある」との見方を示した。
また、海外投資家は「在宅勤務の活用や景気後退がもたらすオフィス市場の変化について、強い関心が海外投資家から寄せられている」とも紹介している。
野村証券は地銀と信金があわせて約8割を保有するREITのETFは8月に162億円と2カ月連続の買い越しだったと指摘。それでも、「地域金融機関の中には、今もJ-REITへの投資を本格的に再開していない可能性がある」とも推測し、今後、これら機関の資金流入に期待したいとの見方を示した。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
<金融用語>
J-REITとは
Japanese Real Estate Investment Trustの略。日本版REITとも称される日本で組成されたREIT(不動産投資信託)のことをいう。投資家から集めた資金で購入した不動産を運用し、その賃貸収入や売買益等をもとに投資家に分配する金融商品で、もともと米国で誕生したが、その仕組みが日本のREITと米国のREITでは異なる点もあるため区別してJ-REITと呼ばれている。