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「預貯金代わり」の投信はあるか―楽しく増やす!「北澤式」資産運用術【18】

第3部 投信選びのツボ ⑩ 「預貯金代わり」の投信はあるか

リターンはソコソコでいいから元本割れしない金融商品が欲しい――。預貯金の利子がほぼなくなった今、預貯金の代わりとなる安全性の高い商品を望む声は切実だ。投資信託にも「下値限定型」や「元本確保型」といった安全性を売り物にしたファンドがあるが、商品特性をよくよく理解したうえで購入しないと後悔するはめになる。

■国内債券型、リターンはすべてマイナス

大手銀行の定期預金金利は現在0.002%。1000万円を1年間預けても利子は税込みで200円にしかならない。銀行の定期預金はいざというときに預金保険が「元本1000万円までとその利子」を保証してくれるが、元本はともかく、この水準の利子を保証してくれてもあまり有難みはない。預貯金はおカネを預けておけば減らないというだけで、利殖の機能はとうに失っている。

では、投信で預貯金と似た役割を果たしてくれる安全性の高いファンドはあるだろうか。かつては国内債券で運用するファンドがそれに近かった。しかし日銀の異次元緩和政策で国内金利はほぼ下げ余地がなくなるまで下がり、大半の国内債券型は信託報酬率も吸収できないほどリターンは低下してしまった。今回、データをみて改めて驚いたのだが、8月末時点で国内債券型(マネープールを除く)には過去1年のリターンがプラスだったファンドは1本もなかった。

まだ金利が残っている米国債などの外国債券はどうか。為替ヘッジ付きならリスクは抑制できるとしても、こちらもコロナ・ショック後の金利の急低下で投資妙味は薄れてしまった。

何が言いたいかというと、安全性が高い債券を投資対象とした投信であっても、超低金利の環境下では預貯金に近い機能は果たせない、ということだ。それでも預貯金に似せた、安全性が高そうな投信を作ろうとしたら、かなりの無理や工夫を重ねなければならない。

個人的な見解ではあるが、そんな無理や工夫を重ねた投信が「下値限定型」であり、「元本確保型」だ。いずれも安全性が高くて預貯金よりも有利におカネを回したいというニーズに対応している。「利益は欲しいが損をするのは絶対イヤだ」というリスク嫌いの人々の心をくすぐるのだろう、そして何より販売会社が売りやすいファンドで、それなりの資金を集めている。

■ショックに打たれ弱い

「下値限定型」は一定の水準までしか基準価額を下げないような仕組みを取り入れた投信だ。たとえ株式相場が暴落しようが損失は限定的、一方で運用がうまくいけば利益は天井なしなので、安心して購入できるようなイメージを与える。そんなにうまい話はあるのだろうか。ヒット商品の「りそな・リスクコントロールファンド」(愛称=みつぼしフライト)を例に仕組みをみてみよう。

「みつぼしフライト」は追加購入ができない単位型のバランス型投信(信託期間10年)で、2019年3月設定の「みつぼしフライト2019-03」を皮切りに「同2020-06」までシリーズで8本を販売した。基準価額が「確保ライン」(当初9500円、基準価額が1万500円に達すると1万円に引き上げ)と呼ぶ水準を上回るような運用をめざし、確保ラインにタッチするか、基準価額と確保ラインの差が20営業日連続で50円未満となったときには繰り上げ償還する。

下値を限定する仕掛けは2つ。まず運用面では相場の状況に合わせて資産の配分を大きく動かし、市場環境が悪化したときには現金や債券など安全資産の比率を上げて守りを固める。2つ目が銀行保証だ。繰り上げ償還する際に基準価額が確保ラインを下回っていた場合、差額は銀行が保証して確保ラインの9500円を返す。

結論をいうと、この投信は平時ならともかく、ひとたび市場が大きなショックに見舞われると身動きが取れなくなって、リターンは上がりにくくなる。なぜなら基準価額が下がるほど、確保ラインに達しないようリターンを生まないキャッシュなどの安全資産の組み入れを増やすからだ。だから、その後に相場が反転してもなかなか上昇相場には乗れない。一方、信託報酬(現金比率によって1.243%~0.287%に変動)や銀行保証料(0.269%)は徴収されるので、市場環境が好転しないとキャッシュを抱えたまま、基準価額は少しずつだが確実に下がっていく。

■普通のバランス型という選択肢

実際にコロナ・ショックが起きた今年3月末には「2020-02」の基準価額が9500円の確保ラインに達し、翌4月には「2019-03」が確保ライン(1万円)まで下げて繰り上げ償還となった。運用を続けている19年設定の他の4本も戻りは鈍く、今も基準価額は1万円を下回ったままだ。

最も見込み違いだったのは今年2月半ば設定の「2020-02」の購入者だったろう。何しろ設定から1カ月半で5%の損失が確定してしまった。「コロナ・ショックの暴落があったにもかかわらず5%の損にとどまってよかった」と思う人がいるかもしれないが、損を取り戻すには新たな投信を買うなど、投資をやり直すしかない。

それなら最初から低リスクで、かつ実績のあるバランス型を選択した方がよいのではないか。例えば安定した運用が評価できる「ラッセル・インベストメント・グローバル・バランス安定型」はコロナ・ショックで基準価額が直前高値から14%下落したが、3カ月後の7月初旬には下げ分を埋めて再び高値を付けた。

銀行保証が付くか付かないかなど細部には差があるとしても、「下値限定型」投信の仕組みはほぼ同じで、多くのファンドはショックに打たれ弱い点も変わらない。残高が最大の「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド(愛称=あんしんスイッチ)」が典型で、コロナ・ショック以後は資産の9割以上がキャッシュになり、基準価額は「プロテクトライン」と称する下値保証の水準(9000円)ギリギリで低空飛行を続けている(グラフ)。

あんしんスイッチ

■コロナ・ショックで分配金ゼロに

「元本確保型」はもう一歩踏み込んで、運用がうまくいけば分配金が出て、しかも投資元本がほぼ確実に返ってくるという投信だ。ただし、元本が確保されるのは「満期まで保有したとき」という条件が付く。2018年7月に売り出した単位型投信(信託期間10年)の「ゴールドマン・サックス社債/国際分散投資戦略ファンド」(愛称=プライムOne)が人気化したのをきっかけに、同種のファンドの設定が相次いだ。

「プライムOne」シリーズはこれまで21本売り出し、残高合計は約3500億円に達した。「貯蓄と投資の中間商品」という位置づけで、預貯金の取り込みを狙った商品だ。

仕組みがとても複雑で、わかりやすい説明ができずに申し訳ないのだが、要点は①投資対象は米ゴールドマン・サックス証券(GS)グループが発行する仕組み債②GSが潰れない限り仕組み債は満期の10年後に元本が返ってくるので、この投信も元本を返済できる③ただし仕組み債の価格は変動するので10年の間には元本割れする可能性があり、途中売却すれば損が出ることもある④仕組み債の利子は「国際分散投資戦略指数」という独自開発の指数に連動し、指数が上昇すれば年1回の分配金が増え、下落すれば減る⑤運用会社が想定する投資家リターン(分配金利回り)は年2%程度で、リスクは3%――といったところだ。

このファンドの評価は、2%程度というリターンの実現性が最大のポイントになるだろう。元本は返ってくるという前提で、10年間にわたり年2%のリターンが得られるとすれば、魅力的だと考える人も多いに違いない。

実際はどうかというと、リターンはファンドによって大きくブレている。今年3月上旬までに決算期を迎えた「GS社債/国際分散投資戦略ファンド2018-10」から「2019-02」までの5本は年間の分配金が500円を超える大盤振る舞いとなったのに対し、4月から8月が決算期に当たった5本は分配金がゼロだった。コロナ・ショックで国際分散投資戦略指数が下落したのが原因だ。このファンドは市場環境によってリターンが大きく変動するリスク性の商品だというのがわかる。

■利益はリスク資産からしか生まれない

仮に10年ならせば年2%のリターンを実現できたとしても、もっとリスクを取っていいはずの長期の資産形成層には、運用の成果としては少々物足りない。一方、普通のシニア層には2%は悪くない数字だが、金融資産がさほど多くない場合は資金が10年固定されるのは少々つらい。結局、このファンドに最もメリットを感じるのは、資産保全を優先させたい富裕層などが中心かもしれない。

「下値限定型」も「元本確保型」も一見すると安全性が高そうにみえるが、リターンは何も約束されていない。いずれも仕組みが複雑なだけに中身をよく理解しないまま、繰り上げ償還や分配金ゼロという現実に直面し、初めて「こんなはずではなかった」と思う人も多いのではないか。

これらの投信を説明しながら改めて思うのは、リスクとリターンは二律背反だという当たり前の原則だ。損をするのを嫌がり、岩陰に隠れるようにリスクから逃げているだけではリターンは得られない。ことに現在のように金利が消滅してしまった世の中では、利益はリスク資産しか生んでくれないのだからなおさらだ。

だからこそ、資産の分散や運用期間の調節、上手なファンド選びなどによって、リスクをコントロールする重要性が増していると思うのだ。(QUICK Money World=北澤千秋)

著者名

QUICK Money World 北澤 千秋


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