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Goal5「ジェンダー平等を実現しよう」―SDGsの今を知る

SDGsの今を知る VOL.6 クラウドクレジット編集部

SDGsのゴール5には「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。今回は、この目標の世界における現状や達成への道のり、さらにはこの目標自体の課題点といった部分にまで掘り下げて考えてみたいと思います。

※SDGsアイコン「5.ジェンダー平等を実現しよう」

そもそも「そもそもジェンダー平等」って何のこと?

さて皆さん、この記事のタイトル、「ジェンダー平等を実現しよう」、を読んだときに何を思い浮かべたでしょうか?「男女平等」でしょうか?でもそれならなぜ、もっとわかりやすく「男女平等を実現しよう」という目標にしないのでしょう?

目標を設定してもそれが何のことを言っているのか曖昧だったり、人によって解釈が違ったりすると、目標実現はおぼつきません。なので、「ジェンダー平等を実現しよう」というSDGsの現状や達成度を考える前に、「ジェンダーって何?」という問いについて考えてみたいと思います。

「ジェンダー」の定義

内閣府によると、ジェンダーとは「生物学的な性差(セックス)に付加された社会的・文化的性差を指します」とのこと。また、UN WOMAN(国連女性機関)は「ジェンダーとは、男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係を意味」する、と定義しており、JICA(国際協力機構)によると「ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指します」とのことです。

少し難しいように聞こえますが、キーワードは、「社会的」という言葉です。我々は生物学的な性(セックス)を持って生まれてきますが、社会の中で形作られる性のことを指してジェンダーと言うようです。例えば、「男性は会社で仕事をし、女性は家事、育児をする」、というような考え方は、社会的に形作られた価値観なので、ジェンダーによる差別、ということができるでしょう。

この「ジェンダーによる差別」をなくそう、というのが「ジェンダー平等を実現しよう」というゴールの目標です。それでは具体的にその中身を見てみましょう。

SDGs Goal 5 「ジェンダー平等を実現しよう」の中身と現状

5-1

あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。

5-2

人身売買や性的、その他の種類の搾取など、全ての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。

5-3

未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。

5-4

公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

5-5

政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。

5-6

国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、並びにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。

5-a

女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、並びに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。

5-b

女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。

5-c

ジェンダー平等の促進、並びに全ての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。

出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

これらの目標はさらに定量的に計測可能な目標に落とし込まれており、例えば5.5は、

5-5-1

国会及び地方議会において女性が占める議席の割合

5-5-2

管理職に占める女性の割合

出所:外務省HP資料に基づいてクラウドクレジット作成

という2つの下位目標に分割されています。こうして測定可能な目標にまで落とし込むことで目標の達成具合を計測できるようにし、達成できなかったらその原因分析をすることで改善につなげていけることがSDGsの意義です。

女性だから早く結婚しなければならない、(女性が行うことの多い)育児や家事に価値を認めない、女性だから政治家や管理職になりにくい、女性だから土地の所有権を持てない、といった数々のジェンダー差別(これらの差別は社会的に形作られたものです)をなくすことを数値目標にまで落とし込んで設定していることがうかがえます。

さて、では、これらの目標の世界における改善具合はどうでしょう?

国連が発行しているThe Sustainable Development Goals Report 2020によると、各国の努力によって近年、特に早期の結婚や女性性器切除の数は減っており、また、女性の政治への参画も過去になく高くなっている、とのことです。

例:世界各地域における20~24歳の女性の中で15歳前と15~18歳に結婚もしくは婚約した人の割合(2009年と2019年の比較)。中央アジアを除く全ての地域で15歳前に結婚や婚約をする割合も、15~18歳で結婚や婚約をする割合も減っている。

※世界各地域における20~24歳の女性の中で15歳前と15~18歳に結婚もしくは婚約した人の割合(2009年と2019年の比較)
出所:国連 The Sustainable Development Goals Report 2020

また、その他の項目についても多くの国で改善の兆しがみられており、2019年時点で数値が計測された111の国のうち、101の国がこのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」において「若干改善」もしくは「目標通り改善中」のステータスになっています。(詳細はSustainable Development Report 2019

まだまだ世界全体で改善すべき点はあるものの、改善傾向にはあることがうかがえます。

SDGsを超えて:1.多様性の問題

さて、もう一度5-1から5-cの目標を見てみると、5-4と5-6以外すべて、「女性」という単語が入っています。世界の現状を鑑みると、女性差別がまだまだ各地に残っていることから、この目標の主眼が女性差別をなくすことに置かれていることがうかがえます。

しかし、なくすのは女性差別だけでいいのでしょうか?

本来であれば女性差別に限らず、すべての種類の差別をなくすべきでしょう。昨今話題に上り始めましたが、LGBTQ(Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Questioning/Queer)の人々に対する差別も当然なくさなければならないでしょう。

「女性」という言葉を使った時点で、人は「男性」「女性」のいずれかにカテゴライズできる、という二元論的価値観を示していることになります。しかし、性のあり方は多様です。その多様な人々に対する平等を確保することが最終ゴールではないでしょうか。ゆくゆくは女性差別の撤廃だけでなく、すべての形の差別をなくことを共通のゴールとして設定することが望まれるのかもしれません。

SDGsを超えて:2.平等の問題

また、SDGsでは語られていない最後の大きな論点があります。それは、「平等とは何か」ということについてです。上記のLGBTQの問題は一旦置いておくとして、ジェンダー平等を達成する、とは、様々なジェンダー(社会的につくられた性)を「全く同等に」扱うことなのでしょうか?

例えば、夫婦が一緒に買い物に行き、荷物を分担して持つことになったとします。その時に、差別はよくないからという理由で、夫婦、全く同じ重さの荷物を持つことが「平等」でしょうか?

例えば、(特に日本の一部の会社においては)男性の長髪はビジネスマンとして不適切とみなされる場合がありますが、平等を担保するために男性の長髪も許容されるべきでしょうか?

議会や管理職において男女の数的バランスをとることが求められるのであれば、軍隊や自衛隊における男女の数は?

男性がビーチで上半身裸が許されるのであれば女性も許されるべき?

等々、疑問は尽きません。平等とは「全く同等に扱うこと」ではないのかもしれません。

Gender Equality(ジェンダー平等)とは、Sameness(全く同じであること)を意味するのでなく、Fairness(公正であること)を意味すべきなのかもしれません。「男女の平等」を最終ゴールとするのではなく、「多様な人々が公正に生きられる社会」を最終ゴールにすると、まだまだ道のりは遠いように思われます。その初めの一歩としても、SDGsの5番目のゴールをみんなで推進してゆきたいものです。

参考文献:

 

(月1回配信します)

写真=Linh Pham/Getty Images


クラウドクレジット株式会社 :「日本の個人投資家と世界の信用市場をつなぐ」をコーポレートミッションとして掲げ、日本の個人投資家から集めた資金を海外の事業者に融資する貸付型クラウドファンディングを展開。新興国でのインフラ関連案件も多く、現地のマクロ・ミクロ経済動向などに詳しい。累計出資金額は約313億円、運用残高約160億円、ユーザー登録数4万8000人以上(2020年9月7日時点)

 


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