【日経QUICKニュース(NQN) 藤田心】国内投資家による外債投資が息を吹き返している。財務省のデータによると、日本の投資家による海外の中長期債の買越額は4年ぶりの高水準となった。11月は米大統領選後に米長期金利が節目の1%に向けて上昇の勢いを強める場面があり、国内投資家は利回り水準の高さに着目してすかさず買いを入れたようだ。年金基金の一部は上昇が続く株から債券へとリバランス(資産配分の調整)したとの見方もある。
■米長期金利1%が目先の天井
財務省が8日発表した11月の対外及び対内証券売買契約などの状況(月次、指定報告機関ベース)によると、国内投資家は海外の中長期債を5兆90億円買い越した。買越額は2016年7月以来の大きさだ。野村証券の中島武信氏は「米大統領選の不透明感が和らぎ、米金利が上昇したのが買いを誘ったのではないか」と話す。10月も中長期債は1兆3685億円の買い越しだったが、下旬に限ると取得よりも処分が多かったためだ。
11月は新型コロナウイルスのワクチン普及で経済活動が正常に向かうとの期待が高まっていた。相対的に安全資産とされる債券には売りが出やすく、米長期金利は9日に一時0.97%と3月後半以来の水準に上昇(債券価格は下落)した。市場参加者の多くは1%が米長期金利の目先の上限と意識しており、今回のデータからは国内勢も米国債価格の底値が近いとみて買いに動いたことがうかがえる。
財務省のデータを子細にみると、新たな側面もみえてくる。投資家別でみると、銀行勢の買越幅は1兆5580億円と6月以来の大きさだった。みずほ証券の上家秀裕氏は「国内が運用難の状況にあり、少しでも稼げる商品を探す動きが続いている可能性がある」と指摘する。
国別の投資先が分かる国際収支のデータでは、10月には国債などソブリン(政府債務)で米国やカナダ、オーストラリア(豪州)の債券への買い越しが目立っていた。足元でも「とりわけ為替ヘッジ後の利回りが相対的に高い豪州の国債や地方債に国内投資家の需要が集まっている」(上家氏)という。
■GPIFのリバランス
さらに、市場では「11月は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるリバランスの影響が大きい」との声も少なくない。投資家別では11月、年金基金の動きを示すとされる信託銀行(信託勘定)が中長期債を2兆9671億円買い越す一方で、「株式・投資ファンド持ち分」を2兆5247億円売り越した。
ある国内証券の債券担当者は「株高を受けてGPIFがポートフォリオ(資産配分)調整のために海外で株から債券に資金を移したのではないか」と話す。米ダウ工業株30種平均をはじめ、米国の主要株価指数は足元では上昇の勢いに陰りがみられる。国内勢による外債投資の持続力には疑問の声も少なくない。