【QUICK Market Eyes 片平正二】
■GPIFが外国株のESG指数を新たに選定、日本企業のESG評価で広がりも=三菱モルガン証
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が18日、外国株式のパッシブ運用として新たに2つのESG(環境・社会・ガバナンス)指数を選定したと発表した。ESG総合型として「MSCI ACWI ESG ユニバーサル指数」、テーマ型(女性活躍)として「Morningstar ジェンダー・ダイバーシティ指数」が選定された。
GPIFがESG総合型とテーマ型(女性活躍)の2種類の指数を選定したことを受け、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は21日付のリポートで「新たに採用された外国株式を対象としたESG指数における評価方法が、日本企業のESG評価で採用され広がる可能性があると弊社では考える」と指摘した。リポートでは、GPIFの発表資料におけるESG総合型に関する説明でESG関連指標が示されていることを踏まえつつ、「これら指標で掲載されている客観的な数値データの評価項目に注目したい」と指摘。また、テーマ型(女性活躍)に関する説明で「ジェンダーに関する評価項目が掲載されている。これらの評価方法が、日本の株式市場におけるESG情報開示やエンゲージメント(建設的対話)に影響を与える可能性があると弊社では考える」とし、日本株の評価方法に影響することもあり得るとみていた。
■カーボンプライシングの推進、EUの排出権取引が日本への模範例=みずほ証
21日付の日本経済新聞朝刊は一面で、「菅義偉首相は脱炭素社会の実現に向け、炭素の排出に価格をつけるカーボンプライシング(CP)の推進に乗り出す」と報じた。年内に梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相に制度設計の検討を指示するといい、排出枠取引制度や本格的な炭素税導入に向けた環境整備を急ぐという。
みずほ証券は21日付のリポートで「公明党の斉藤鉄夫副代表(元環境相)も11月18日の日経インタビューで『政策面で排出権取引を導入して、発展途上国でCO2を減らし、排出量に応じて課税する炭素税を導入するのも有効だ』と述べていたため、公明党と関係が深い菅首相も、公明党の提案に乗る方向性なのかもしれない」と指摘した。「これまで環境省が導入に前向きだった一方、経済界の重荷になるとして、経産省が導入に反対してきた」としながら、「欧州連合(EU)の排出権取引が日本への模範例」とも指摘。「EUでは2021年に『炭素国境調整メカニズム』(Carbon Border Adjustment Mechanism)が導入される予定になっている。環境規制が弱い国からの輸入品に事実上の関税を課すシステムであり、EU内の素材業に相対的に恩恵をもたらすと予想されている。新制度から悪影響を受けるのは、日本ではなく、中国など新興国の素材業だろう」とも指摘し、中国などの素材企業への影響に関心を寄せていた。
<金融用語>
エンゲージメントとは
エンゲージメントとは、「約束」、「取り決め」といった意味を持つ言葉であるが、ここでは機関投資家が企業に対して行う「建設的な目的をもった対話」のことを指す。投資家が、短期的なリターンを追い求めるのではなく、中長期的な視点で企業に働きかけることで、当該企業の持続的な成長と企業価値向上を促すことを目的とする。エンゲージメントの手段は、手紙、直接面談、役員との面談など。株主提案、議決権行使を含む場合もある。投資家はエンゲージメントに際し、企業の経営戦略や事業計画を調査しておく。そのうえで企業に考えを伝え、対話をすることによってスチュワードシップ活動の責任を果たす。 一対一で行うエンゲージメントだけではなく、複数の投資家が協力して行う場合もある(協働エンゲージメント)。(QUICK ESG研究所)