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日本企業、半数超が22年末までに利益回復 広告や医薬品が強気の予想 <HSBCナビゲーター調査>

記事公開日 2020/12/30 13:00 最終更新日 2021/3/22 08:25 中国・韓国・アジア 中国 HSBC デジタル化 国内景気 新型コロナウイルス ESG

世界39の国・地域の1万社以上の企業を対象とした最新のHSBCナビゲーター調査で新型コロナウイルスを企業がどのように捉えているかが明らかになりました。企業が世界的な感染拡大にどのように適応し、将来に備えているかを報告します。

12月1日に発表したリポートによれば、企業の8%が新型コロナの感染拡大前より利益が増えたと回答し、45%は2021年末までに感染拡大前の利益水準を回復する見通しだとしている。一方で28%は感染危機で失われた利益を取り戻すには22年末までかかると回答し、11%は23年末になるとしている。6%の企業は24年か、それ以降にずれ込むと予想する。 

日本企業は9割が利益伸びず

日本企業の3分の2は現状に適応できていると回答したが、4分の1(24%)はとりあえず現状をしのいでいるだけだ。利益を伸ばしているのは10分の1にとどまる。半数以上が22年末までにはコロナ前の利益水準を回復できると予想しているが、23%の企業は25年までかかるとみる。世界全体では25年までかかる企業は17%だ。そして、日本企業の6%はかつての利益水準に戻ることはない、と予想している。

世界では今後1年間に売上高が伸びると予想している企業は64%と、1年前より15ポイント低下した。日本企業をみると35%と22ポイントの低下だ。一方で売上高の伸びが見込めないとする日本企業の割合は倍増した。日本企業は内需拡大と新型コロナの影響が経済の回復と業績成長を左右する大きな要因になると回答し、感染の再拡大が最大の脅威だとしている。

勝ち組の企業は?

世界では42%が2021年には売上高が5%を超える伸びを予想するが、日本企業では19%にとどまっている。こうした世界の「高成長」企業は89%が積極的に投資を拡大している。売上高の減少を想定している企業のうち、24%は事業の縮小を計画し、そのうち42%は投資削減を予想する。 

広告宣伝セクターや医薬品セクターが売上高の伸びに最も強気で、エネルギー、化学、技術サービスを上回っている。自動車や通信、旅行、教育セクターでは強気の見方が少ない。

そうはいっても全体でみれば新型コロナ禍に企業は柔軟に対応している。それぞれ個別の課題について投資判断を調整し、テクノロジーの導入で成長を目指している。ほとんどの企業が、社会的責任やレジリエンス(回復力)、社会的評価が長期的な成長をもたらすと認識しているようだ。

将来の道筋はデジタル化 

コロナ危機からより力強く回復するにはデジタル化が鍵だ。高成長企業はすでに売上高の大半をオンラインから得ている。また世界の高成長企業の32%は、テクノロジーを軸とする効率化が利益回復の牽引役になると予想し、低成長企業あるいは成長していない企業より意識が高い。従って高成長企業の88%はデジタル化された機器やプラットフォームへの投資を将来にわたって行うことを計画し、3分の1はすでに新たなプロダクトやサービスを開発している。

業績向上につながるESGへの取り組み

また、調査対象の86%が事業の持続性を向上させる取り組みは売上増加につながると考えている。72%の企業が環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する目標を設定し、環境と社会に関する目標への取り組みを定量的に把握することに最も注力している。

日本企業も約半分が持続性の計画を持つが、世界と比べ割合は低い。日本企業の約4分の3は社会的サステナビリティ指標を備え、また半分以上が環境面のサステナビリティ指標を有しているが、ガバナンス指標が備わっている割合はわずか4分の1ほどだ。 

日本企業の10社中9社近くは環境面と倫理面の取り組み改善は事業にプラスになると考えている。それは従業員の働き方や福利厚生を向上させ、顧客の需要を高め、そして地域社会に貢献していくための新しい手法を取り入れることだと認識している。また3分の2の企業はサステナビリティへの取り組みを一段と強化すれば来年にかけて売上高は成長すると予想している。ただ、この比率も世界的にみれば低い。日本企業の経営課題におけるサステナビリティの位置づけは世界的にみればなお低いと考えられる。

クロスボーダー取引を追及

世界の半分の企業がクロスボーダー取引がコロナ危機前よりも難しくなると予想している。それでも国際的な事業機会を追求する姿勢は失っていない。世界的な企業の72%が今後2年間、国際的取引に積極的だ。また37%は国際的取引を通じてより広範な知見と新たな事業構想が得られることを歓迎し、また30%の企業は地域経済の発展に寄与する社会貢献が可能だと回答した。

今年に入ってからアジア太平洋地域の企業にとって主要な海外市場は米国から中国に代わった。また日本企業にとっても中国は最大の貿易相手国であり、事業を拡張する上で最も魅力的な市場である。 

アジア地域の貿易の全体に占める域内貿易の比率はすでに60%に達し、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)が発効すればこの比率は間違いなく上昇する。アジアの統合は世界貿易システムにおけるアジア地域の役割を強化するだけでなく、世界経済の次の段階への成長を導くものだ。 

※ナビゲーター調査は20年9月11日から10月7日にかけて実施した。

<金融用語>

サステナビリティとは

英語表記はsustainability(=持続可能性)。 サステナビリティとは、主に、社会が将来にわたって持続的に成長・発展していくために、環境負荷の削減とともに、企業活動の経済的側面や社会的側面など調和の取れた活動が不可欠であるという考え方をさす。 また、2003年3月に金融庁は、中小・地域金融機関に対して、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を公表し、中小・地域金融機関不良債権問題の解決に向けた中小企業金融の再生と持続可能性(サステナビリティー)の確保を発表した。


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