グローバル・パブリック・ポリシー委員会(GPPC)が、国際会計基準審議会(IASB)宛ての書簡で、企業の財務報告書が気候リスクを十分に反映したものとなるよう「自らの役割を果たしていく」と明言した。GPPCは4大会計事務所(デロイト・トウシュ・トーマツ、アーンスト&ヤング、KPMGおよびプライスウォーターハウスクーパースPwC)と中堅2社(BDOおよびグラントソントン)から成る。6社は書簡で、「年次報告書や財務報告書に記された判断、推定および情報開示に対する一義的な責任を担うのは当該企業の経営陣とガバナンス担当者である」とも付け加えている。
気候リスクを反映した財務諸表の作成は、ここ数年投資家の間で論じられてきた課題である。2020年9月、グローバルな投資家グループ(運用資産総額103兆ドル相当)が、企業と監査法人に対し、気候変動の影響を財務報告書に十分反映させるよう求める書簡を連名で公表している。
GPPCは、気候リスクを財務上の重要課題とみなす主な2つのガイダンス文書を支持している。これらの文書は、気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)の提言内容をさらに強化するものである。
GPPCが支持する1つめの文書は、IASBメンバーであるニック・アンダーソン(Nick Anderson)氏が2019年11月に発表した「IFRS Standards and climate-related disclosures」と題するレポートである。アンダーソン氏は「気候変動がもたらす影響は投資家にとって重要なテーマであり、IFRS基準に盛り込まれるべきである。」と指摘している。明確には言及していないものの、現行の報告基準にも気候変動リスクを考慮しているものがあり、その実例を示すことで、「IFRS基準でも、企業が財務報告書の記載内容、記載された資産・負債の評価方法、開示情報の内容について重要な判断を下す際、気候関連リスクや新たに発生したその他のリスクを考慮するよう求めることができる」と論じている。
GPPCが支持する2つめの文書は、国際会計士連盟の下に設置されている独立機関の国際監査・保障基準審議会(IAASB)が公表した「The Consideration of Climate-Related Risks in an Audit of Financial Statement」である。GPPCはこの文書で、「気候変動が当該企業に影響を及ぼしている場合、監査人は、その影響が適用可能な財務報告フレームワークに基づいて財務報告書に反映されているかどうか見極める必要がある。(中略)気候関連リスクが業務上適用される基準や法・規制で定められた自らの責任といかに関係しているかを理解しなければならない」という点に注目している。
EUおよび世界のESG基準策定は目下新たな領域に踏み出しつつある。GPPCはサステナビリティ報告書にとって重要なこの時期に行動に移したといえる。
※本稿は、レスポンシブル・インベスター(Responsible Investor)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。同社は、ロンドンに拠点を置く、世界の機関投資家に向けた責任投資、ESG、サステナブル・ファイナンスを専門的に取り扱うニュースメディアです。
<金融用語>
国際会計基準審議会(IASB)とは
国際会計基準審議会(IASB)とは、国際財務報告基準(IFRS)の制定や推進化を図るために設立されたロンドンに本部を置く民間組織のこと。 前身は、1973年に会計士による組織として設立された国際会計基準委員会(IASC)。 2001年にIFRSの作成を進めるため常勤の専門家による国際会計基準審議会として再編された。