フランス銀行(Banque de France、以下BDF)の調査によると、気候関連情報の開示義務化により化石燃料業界への投資額が40%も減少したことが明らかとなった。
フランスでは、2015年7月「エネルギー転換法」が制定された。同法173条において、上場企業、銀行および信用提供機関、機関投資家(保険会社、年金またはミューチュアルファンド、政府系ファンド)は、欧州で初めて気候変動関連情報の開示が義務化された。資産残高が5億ユーロを超える大手機関投資家は、投資判断におけるESG基準の考慮や気候変動関連リスクに関する情報、脱炭素化に向けた自主的な取組みに関する情報など、コンプライ・オア・エクスプレイン原則に基づき開示が求められている。銀行は、ストレステストの構成項目を含む別の情報開示が義務づけられているが、化石燃料産業への融資や投資に関する情報開示は求められていない。
調査では、化石燃料業界で発行された計15,523の有価証券(うち12,167は債券、3,356は株式)を対象に、フランス国内の機関投資家と、脱炭素化に関する情報開示が義務づけられていない同国の銀行および欧州の他の金融機関の保有状況を比較した(分析期間は2014年10-12月期から2019年7-9月期まで)。その結果、前者による化石燃料関連企業への投資額は後者に比べて大幅に減ったことがわかった。また、フランスの機関投資家による石炭およびシェールオイル、シェールガスなどの非在来型化石燃料の生産企業からのダイベストメント総額は、在来型の石油・ガス企業からのダイベストメント額の約2倍に上ったことも明らかとなった。重要なのは、化石燃料からのダイベストメントと、これら銘柄の市場でのパフォーマンス低迷との間に相関性が見られなかったという点である。
本調査について、エネルギー転換法173条の策定に関わったシンクタンク「2° Investing Initiative」のマネージングディレクターを務めるヤコブ・トーマ(Jakob Thomä)氏は、「信じられない。情報開示が義務化された当時は想像もしなかった結果である」と語った。
BDFのミクロ経済・構造分析局副局長で、この調査を主導したジーン・ステファン・メソニア(Jean-Stephane Mesonnier)氏はRIの取材に対し、「今回の調査で173条の制定は『成功』だったことが示された。一方で、機関投資家による情報開示のモニタリング状況を見る限り、情報開示の質と準拠のレベルにはなお改善の余地がある」と述べた。さらに、「様式を統一した詳細な情報開示を義務化すれば、より大きな効果が得られるのだろうか。また、運用ポートフォリオのカーボンフットプリント削減に取組む機関投資家は、気候変動関連リスクの大きさによって、特定の業界内で投資先企業を選別したり、あるいは業界の枠を超えた投資の再配分をしたりするのだろうか、といった追加調査すべき課題も見えてきた」と話した。
EUでは、金融機関に対してグリーンウォッシュ防止の目的で原則に基づく情報開示を義務づける規制の制定に向けた準備が始まっている。2022年にはさらに厳格な情報開示関連規制の発効も予定されている。
※本稿は、レスポンシブル・インベスター(Responsible Investor)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。同社は、ロンドンに拠点を置く、世界の機関投資家に向けた責任投資、ESG、サステナブル・ファイナンスを専門的に取り扱うニュースメディアです。
化石燃料の需要サイドから見ると人々が化石燃料に依存した生活から脱するのは緩やかだろうに、化石燃料の供給サイドでは化石燃料業界の投資の引き上げが早すぎると、化石燃料の供給不足になり、化石燃料の価格高騰が起きるんじゃないだろうか。こんな短期間で化石燃料業界への投資が40%減は行き過ぎな気がする。 もしそうなら、その歪の部分で投資のチャンスが生まれるかも。