【QUICK Money World 辰巳 華世】投資する企業から配当以外にちょっとした贈り物が届いたらちょっぴり幸せな気分になりませんか? 株主優待は株主にとって嬉しい制度です。今回は株主優待とは何かという基本的な説明から、どうすれば株主優待を受けることができるのか、株主優待目当てで株を購入する際の注意点、株主優待ではどのようなものが貰えるのか、同じ企業から株主優待を複数貰うことはできるのかなどについて紹介します。
株主優待とは
株主優待とは、株主が企業から貰える商品やサービスなどの優待のことです。優待の内容は、株主が「貰えるとちょっと嬉しいな!」と思える品々です。自社製品やお米、クオカードなどの金券や優待券、カタログギフトなど様々なタイプがあります。株主優待は、企業が株を保有してくれる株主への御礼として贈られるものと捉えても良いです。
最近では、株主優待だけで暮らす元プロ棋士で投資家の桐谷広人さんがTV番組などで取り上げられるなど、株主優待への注目が高まっています。ちなみに桐谷さんは、食事、衣服、雑貨まで日常に必要なものはすべて株主優待でまかない、現金は家賃と光熱費以外一切使用しないという生活をしているそうです。移動は自転車です。生活のすべてを株主優待で乗り切れるほど株主優待の種類は多様化しています。
※株主優待の種類と数(QUICK Money World、2022年3月18日時点)
桐谷さんほど株主優待を極めることは、投資資金面から見てもハードルは高いですが、一般的な個人投資家にとっても株主優待は配当金と並び、投資する銘柄を決める一つの選定基準になります。生活のすべてを株主優待でとまではいかなくても、毎月ひとつ株主優待が送られてくるように選んで銘柄を買ってみると、毎月の小さな楽しみとして生活に潤いを与えてくれるかもしれません。
銘柄の選定の仕方は人によってそれぞれ基準があります。投資する時に気になる指標の一つに配当利回りがあります。配当利回りは購入した株価に対して一年間でどれだけの配当を受け取ることができるかを示したものです。一般的に業績が良い企業は1年に1回、もしくは年2回、株主に対して配当を出します。配当利回りは数字が高いほど利回りが良いことになります。
配当利回りの計算式
配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価格×100
配当利回りと同じように株主優待に対しての利回りを考えた「株主優待利回り」があります。配当利回りと同じ様に購入した株価に対して、株主優待の価値がどれくらいあるかを示したものです。
株主優待利回りの計算式
優待利回り(%)=株主優待の価値(金額換算)÷投資金額×100
配当利回りも優待利回りどちらも利回りが高いほどお得になります。ただ、どちらも分母は株価なので、株価が下がると相対的に利回りが高くなります。利回りが高いからといって魅力的であるとは一概に言えないため注意が必要です。
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どうすれば株主優待を受けることができる?
株主優待や配当金を受け取るには、権利確定日に株主になっておく必要があります。権利確定日は銘柄によって時期は異なり、主に年1ー2回定められています。ただ、権利確定日には注意が必要です。権利確定日に株を購入しても遅く、権利を持った株主にはなれません。現在、株式は購入してから受け渡しまでに2営業日かかります。なので、実際には権利確定日の2営業日前(この日を「権利付最終日」と呼びます)までに株式を必要な株数購入し保有していなければなりません。土日や祝日は営業日ではないので含みません。
具体的な日付を入れて見てみましょう。権利確定日が3月31日(木)だった場合、2営業日前の3月29日(火)が権利付最終日となりこの日までに株を購入しないと株主優待の権利が手に入りません。3月30日(水)はこの日に株を買っても権利が手に入らないので「権利落ち日」と呼ばれています。
一般的に権利確定日の近くは株主優待や配当狙いの投資家の購入が集まりやすく株価が変動しやすい傾向があります。
株主優待は、すべての企業が実施しているわけではありません。優待の有無は株式購入の前に確認する必要があります。株主優待がある場合は、企業ごとに保有株数や保有期間などに応じて優待を受けられる条件が決められています。例えば「100~299株保有で3000円の商品券、300株以上保有で5000円の商品券」など、保有株数により優待内容がグレードアップすることもあります。株主優待が物や商品券の場合は、企業によって異なりますが2~3カ月後に郵送で送られてきます。
株を売却した場合は株主優待は受けられない?
銘柄によっては、株主優待の権利に保有期間の条件に入れている場合があるので確認は必要ですが、一般的には権利確定日に株主であれば、株を売却しても株主優待をもらうことができます。現在の受渡しには売買から2営業日かかるので、先ほどの3月30日(水)の権利落ち日に株式を売却しても3月31日(木)の権利確定日は株主の状態なので、株主優待の権利を受け取ることができます。
権利付最終日の翌日の権利落ち日以降は、株を売却して株の保有枚数が条件以下になっても株主優待をもらうことができます。次の権利確定日が対象となる株主優待を受けるには、次の権利付最終日までに株を買い戻さなければなりません。
株主優待目当てで株を購入する際の注意点
株主優待を意識して株を購入する際にはいくつか注意点がありますので見ていきましょう。
株主優待だけを目当てに株を購入するのはある意味リスクがあります。仮に1万円の商品券を株主優待で貰うことができても、株価が下落しもっと大きな額の損失が出てしまうこともあります。実際に株を購入する際は、株主優待に注目する場合でもその企業の業績や今後の成長性なども確認して検討することが大切です。
信用取引では株主優待を貰うことはできません。信用取引は、お金を証券会社などから借りて株を買う「信用買い」や、株券を証券会社などから借りて株を売る「信用売り」があります。「信用買い」では、株券は担保として証券会社のものであり、「信用売り」も証券会社の株を借りて売っています。どちらも株は投資家のものではないので、株主優待の権利は発生しません。
株主優待は各企業によって条件が異なります。必ずしも最小単元株数が優待を貰える株数ではないので、購入する前に何株から何が貰えるのか確認する必要があります。
人によっては、株主優待を売却してお金にすることも考えるかもしれません。優待の内容が物で売却できるものであれば可能ですが、時に本人しか使用できない優待などもあるので注意が必要です。
株主優待ではどのようなものが貰える?
最近の株主優待は多様化しています。自社製品の詰め合わせだけでなく、お米や洗剤など生活で消費できるものもあります。企業のサービスで使用できる金券や割引券などのクーポン、自分で好きな商品を選べるカタログギフトなどもあります。
株主優待は配当と同じで毎年必ず貰えるものでもありません。業績によっては廃止されることも考えられます。内容についても変更されることもあります。そのため毎年、企業の株式情報のページなどを確認することが大切です。
なお、QUICK Money Worldでは、適時開示情報サイトや企業のホームページを巡回せずとも、情報の発表後、自動でお手元にメールで公開情報をお届けする「企業情報お知らせサービス」を提供(有料会員限定サービス)しています。決算情報などの適時開示情報に加え、新製品やイベントなどのプレスリリースまで漏れなくタイムリーに受け取れる便利なサービスです。ぜひ、こちらのサービスもご利用ください。
同じ企業から株主優待を複数貰うことはできる?
株主優待には各企業ごとに◯株以上で何が貰えるなど条件があります。なので、複数の証券会社から同じ銘柄を購入しても株主名簿に記載された1名分の条件株数に応じた株主優待しか貰うことはできません。同じ企業から株主優待を複数貰いたいと考えた場合は、名義が重要となります。家族2人でそれぞれの口座からその銘柄の必要株数を購入すれば、2名義分の株主優待を受けることができます。未成年者でも口座開設は可能です。ただ、親権者の同意が必要です。
まとめ
株主優待は株主にとって嬉しい制度であり、企業側としては株の購入を検討する投資家へのアプローチの一つになっています。興味のある株主優待から銘柄を探してみるのも一つの方法ですが、優待だけでなく業績や成長見込みなども見ていくと良いでしょう。
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