米シリコンバレー銀行の経営破綻やUBSによるクレディ・スイスの救済合併など、米欧の金融システムに対する不安が広がっている。米欧の中央銀行が金融引き締めを継続し、わが国でも植田新総裁が就任した日本銀行の舵取りが注目されるなか、米欧の銀行破綻は日本株市場にどのような影響を与えるのであろうか。また、現在は株式市場の活性化を目指した東証の市場再編から1年が経過したタイミングであるが、この市場再編を市場関係者はどう評価しているのであろうか。
10日に発表された4月のQUICK月次調査<株式>で、米欧の金融システムの問題が今後どう展開すると予想するかを尋ねたところ、「米欧であと数行は経営危機になるが、影響は短期的」との回答が39%で最も多く、「これ以上は広がらない」(23%)と合わせると6割を超えた。逆に、「2008年の世界金融危機並みに銀行破綻が広がる」との回答は2%に留まり、市場関係者が今回の金融不安は比較的早期に収まると予想していることが分かった。
次に、一連の金融システムへの不安は主要国の経済や金融システムにどう影響するかを尋ねたところ、「金融機関の貸出姿勢が厳格化し、景気減速に拍車を掛ける」(45%)と「経済への影響は限られるが、クレジット市場の混乱が続く」(22%)を合わせると全体の2/3になる一方、「経済や金融システムへの影響は限定的である」は27%に留まり、景気やクレジット市場に一定の影響があると見る市場参加者が多いことが分かった。
また、一連の金融システム不安が今後、日本の株式市場に及ぼす影響を尋ねたところ、「米欧の金融システム不安から米欧株が下落し日本株にも下値圧力がかかる」(40%)と「影響はほとんどない」(40%)が拮抗する一方、少数派ながら、「米欧の利上げにブレーキがかかることで、むしろ上昇要因になる」(14%)とする強気の市場参加者もいた。
続いて、東証の市場再編をどう評価するかを尋ねたところ、「多少は評価する」(41%)、「大いに評価する」(4%)と肯定的な回答が45%を占め、「あまり評価できない」(21%)、「全く評価できない」(5%)、「そもそも関心がない」(5%)などの否定的な回答の合計を上回った。ただし、「どちらでもない」とする回答も22%あり、まだまだ改善の余地はある、と受け止めるべきであろう。
最後に、継続的にPBR1倍を下回る企業に対して東証が「現状分析、計画策定・開示、取組の実行、年1回以上の進捗状況開示」を要請することの適切性を尋ねたところ、62%の回答者が「適切」と答えており、また同要請に対して、「目標期限の設定と罰則が必要」とする回答は18%、「目標期限の設定は必要」とする回答は合計57%にのぼっており、罰則まで設けないまでも、目標期限を設定してPBR1倍割れからの脱却を迫ることは必要、と過半の市場参加者が考えていることが分かった。これらの考えが、取締役承認に関する議決権行使に反映されるようになれば、経営者の行動も自ずと変わってくるのかもしれない。
【ペンネーム:琴徹久】