ホワイトハウス記者会は29日、ワシントン・ヒルトンで夕食会を開催。ジョークを織り交ぜた演説が恒例の米国らしいイベントで、CNNのライブ中継を楽しんだ。バイデン米大統領は、共和党候補者選びに出馬したヘイリー元国連大使に関し「女性の最盛期は20代か30代、もしくは40代」と発言し解雇されたCNNのレモン氏について、「レモン氏なら私は男盛りと言うだろう」とジョークを飛ばし会場が盛り上がった。続けて登壇したコメディアンのロイ・ウッド・ジュニア氏は、「フランスで退職年齢を62歳から64歳に引き上げる改革をめぐり暴動が起きたが、米国では80歳の現役大統領がさらに4年働きたいと懇願している」と述べ、バイデン大統領が爆笑した。この日のバイデン氏は高齢を感じさせず、余裕さえ感じられた。
1942年11月20日生まれのバイデン氏は80歳。高齢への懸念が多い中で、バイデン氏は25日、2024年大統領選で再選を目指して民主党候補として戦う意向を表明した。再選された場合、86歳で2期目を終える計算になる。ロニー・ジャクソン元ホワイトハウス医師は、バイデン氏に認知能力のテストを要求、さもなければ出馬を取り消すべきと主張した。NBCの看板報道番組「ミート・ザ・プレス」は「年齢が問題」というタイトルで30日の放送を開始。NBCが実施した世論調査では、米国成人の70%が「バイデン氏は再選をめざすべきではない」と答えた。
バイデン氏が再選を目指したのは、共和党の候補がトランプ前大統領になるとの予想が背景にあるとされる。ポルノ女優とプレイメイトへの口止め料支払いをめぐり、トランプ氏は大統領経験者として史上初めて起訴されたが、トランプ氏が「魔女狩り」と呼ぶ起訴をきっかけに人気が復活した。44歳と若いデサンティス・フロリダ州知事が共和党候補として有力視されるが、エマーソン大学の最新の調査では共和党支持者の62%がトランプ氏を支持。デサンティス氏支持は16%にとどまった。
USAトゥデイ紙がサフォーク大学と共同で有権者1000人を対象にした調査で、大統領に適切な年齢は51~65歳との意見が約50%と最も多かった。25%は35~50歳と答えた。仮にトランプ氏が勝利すれば、2025年就任式時点で78歳。66~80歳が理想との意見はわずか8%に過ぎない。バイデン氏は適切とされる年齢を大幅にオーバー、トランプ氏も高齢すぎることになる。ニューヨーク・タイムズ紙は、世論調査では年齢問題が重視されるが、必ずしも実際の投票行動に繋がらないと指摘。過去の例から大統領候補の年齢より有権者を動かす要素は少なくないと具体例をあげて伝えた。
ホワイトハウス記者会の夕食会でロイ・ウッド・ジュニア氏は、「カマラ・ハリス副大統領が何をやっているのか誰も知らない」と語り、ハリス氏は顔を歪めた。「ペンス前副大統領もわからなかった。チェイニー氏(ジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領)のように不適切に行動すればドキュメンタリーが制作されるかもしれない」とブラックジョークで結び、ハリス氏に笑顔が戻った。初の黒人女性の副大統領に就任したハリス氏が主導する移民政策は目立った成果がなく、支持率はバイデン氏を下回っている。
著名ジャーナリストのトーマス・フリードマン氏はニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文で、2024年大統領選は2020年の選挙の再現になる公算が大きいと指摘、ハリス副大統領の存在が一段と重要になると主張した。大統領選は副大統領に投票する意味がかつてないほど大きくなるため、ハリス氏にAI(人工知能)時代への移行政策を任せることなどを重視すべきとの考えをバイデン支持者のフリードマン氏は訴えた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。