5月最終月曜日はメモリアルデー。米国の非公式の夏のはじまりとされ、多くが旅行を楽しむ。全米自動車協会(AAA)は、メモリアルデー3連休で3710万人が自動車で移動する見通しを公表。走行距離は前年比で7%増えると予想した。CBSは、連休中に4200万人を超す旅行者が飛行機を利用する見通しで、過去20年で3番目の多さだと報じた。多数のフライトがキャンセルされ混乱した昨年の教訓を生かし、空港と航空会社はスタッフを大幅増員したとしている。ロサンゼルスでは空港方向の道路が渋滞した。
夏到来でレジャーも活気づく。スポーツ観戦やコンサートを楽しみたいが、インフレでチケット代は高騰。FOXニュースは、人気歌手テイラー・スウィフトさんのコンサートに平均的な米国人は行けなくなったと報じた。メモリアルデー3連休中の「ザ・エラス・ツアー」のチケット最低価格は1600ドル(約22万5000円)に高騰したとしている。マサチューセッツ州の男性はチケット4枚を2万1000ドル(約295万円)で購入したと伝えた。異常と言える水準だ。
米男子バスケットボールのプロリーグ「NBA」のチケットも高くなった。特に八村塁が移籍したロサンゼルス・レーカーズは人気を反映して高い。ゴールデン・ステート・ウォリアーズとの第3戦チケットは873ドル(約12万3000円)で販売された。故コービー・ブライアントの引退試合以来の高値だとCBSは伝えた。CNNによると、今年2月のアメリカンフットボールのスーパーボウルのチケットは3200ドル(約45万円)。昨年より下がったものの、庶民感覚からかけ離れた価格であることに変わりはない。
米野球大リーグのチケットは、NBAやアメフトと比べ買いやすい。大谷翔平がいるエンゼル・スタジアムのチケットは9ドル(約1260円)から購入できる。間近で観戦できる最高額チケットは189ドル(約2万6600円)で買える。大谷がミネソタ・ツインズ戦で投げた21日の試合を観戦する機会があったが、球場は満席だった。ほとんどがエンゼルス・ファン。大谷とマイク・トラウトのユニホームを着たファンが目立って多い。2大スターがグッズの売り上げに貢献、地元だけではなく遠くに住むファンもスターの活躍を見るため球場に足を運んだことは明らかだった。
大谷を日本のメディアが連日報じているが、米国メディアの扱いも異例に大きい。移籍をめぐる観測記事も少なくない。スポーツ・イラストレーテッドは27日、エンゼルスの成績が良いため大谷を含めた大型トレードの観測は後退したが、シーズン後に大谷はフリーエージェント(FA)を選択する可能性が残ると伝えた。ニューヨーク・ポスト紙は、大谷はトラウトの12年4億2650万ドルを超える5億ドル(約700億円)という大リーグ史上最高額のオファーを受ける可能性があると報じた。契約金は6億ドル(約843億円)を超えるとの観測もある。ESPNの記者は、エンゼル・スタジアムから車で1時間のロサンゼルス・ドジャースが大谷を獲得する可能性があると指摘。ブリーチャー・レポートは、サンディエゴのパドレスなども関心を示していると伝えた。
フォーブス誌が3月に発表した大リーグ選手の総収入ランキングで、大谷は6500万ドル(約91億4000万円)で1位だった。スポンサー契約などグラウンド外収入が大きい。FAになれば収入はさらに増える可能性が高そう。大谷の収入が記録的水準に上がっても、球場チケットは値上げしないで欲しい。多くのファンがそう思っている。
(このコラムは原則、毎週1回配信します)
福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。