６月の株式市場のニュースの１つは、米半導体大手エヌビディアが時価総額で世界最大になったことだろう。主力の画像処理半導体（GPU）が生成AI（人工知能）向けに使われ、爆発的な収益成長を見せている。時価総額は１年間で一気に３倍の３兆ドル強と膨らみ、マイクロソフトやアップルを一時抜いた。AI革命時代への市場の期待を象徴するシーンだ。

エヌビディア自体にとどまらず、欧州や日本を含むアジアでも半導体株関連の時価総額が大きくなっている。これをどう見るかを8日に発表された7月のＱＵＩＣＫ月次調査＜株式＞の特別質問として置いた。調査結果は「バブル気味」が全体の53％と過半を占めた。「明らかにバブル」は９％。急ピッチな株価上昇に少なからず市場に警戒感が出てきていることが見て取れた。

同時に注目すべきは32％が「妥当な水準」と答えたことだろう。さらに証券会社と投資家に分けてみれば、「妥当な水準」との回答がそれぞれ25％、39％と差がついたのも面白い。投資家の方が将来性に高い期待を持ってみているといえる。

「エヌビディアの成長性」について聞いた特別質問も、興味深い結果となった。回答がほぼ３つに割れたからだ。「AI時代の中核になる企業であり、さらなる成長が期待できる」が33％、「AI向け半導体でさらなる競合相手が現れ、利益率が低下する」が35％とほぼ並び、次いで「AI実装期へ局面が移り、主役が交代していく」も26％と続いたのだ。

AIがもたらすインパクトがどう展開し、その中でエヌビディアがどんな位置を占めるとみるかによって回答の選び方が分かれたといえるだろう。データーセンターなどAI開発のインフラ増強にエヌビディアのGPUは欠かせない存在だ。ただ、カスタマイズした形のAI半導体の開発など競争はいっそう強まるだろう。デバイスやソフトウェアに実装されたときにエヌビディアが勝者でいられるかも議論がある。まさに今起きている議論を浮き彫りにする回答結果だったといえるだろう。

それに加えて設問したのが、半導体関連など「テーマ型投信」が乱立する現状への評価だ。「ブームの最中で設定される投信は高値づかみの可能性がある」との回答が57％と突出して多かった。しかも証券会社・投資家別でみれば、証券会社が68％と圧倒的に高い回答結果だった。「投資機会を提供しているので評価できる」との回答が全体の17％だったものの、総体としては目先のブームに傾きがちな投信設定への反省が目立った結果といえるだろう。

内閣府がまとめた「アセットオーナー・プリンシプル」案への評価については、一定の評価はしつつも、その限界への視線もにじむ回答結果だった。最も多かったのが「アセットオーナーの規模・属性が様々なので、一律適用は難しい」で43％を占め、次いで「モニタリングやフォローアップの仕組みが不明確で、大きな成果は見込みにくい」が26％と続いた。「インベストメントチェーンの大切な一角であり、高く評価できる」は20％だった。

今回の調査期間は７月２～４日だった。日経平均株価が４万円台を再び回復し、５日に最高値となる４万0912円をつけていく局面での調査だった。１カ月後である７月末の日経平均の予想は単純平均で４万0020円となった。ただ今後の株価見通しでは、さほど視線が切り上がっているわけではない点は注目していいかもしれない。12月末は４万0957円、１年後の25年７月末は４万1920円という結果だった。今後の株価を決める要因として「景気・企業業績」が59%で引き続き最多だが、急ピッチで進む円安によって為替相場への関心が８%と前月から５ポイント上がったことが目を引いた。

【ペンネーム：生豆】

調査には株式市場関係者136人が回答した。

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