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オプション取引の仕組みや種類、メリット・デメリットを解説

記事公開日 2024/11/15 16:00 最終更新日 2024/11/15 16:00 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 金融コラム

市場用語_オプション取引

【QUICK Money World 片岡 奈美】資産運用や投資を始めると、よく知るはずの単語に惑わされる場面に時たま遭遇するかと思います。「オプション取引」もその一つではないでしょうか。投資の世界ではこういった単語の説明に難解な計算式が絡む説明も少なくないこともあり、どうしても「特殊」「複雑」といったイメージや、ともすると「怖い」といった感覚を持たれている投資初心者の方もいらっしゃるかもしれません。
オプション取引は平たく言ってしまえば「とある資産について売買する権利」をやり取りするもの。どのような局面においても収益を得られるチャンスがあり、少ない資金で始めることが可能な投資とあって興味を持たれる方も少なくないようです。もっとも、さまざまなリスクが潜むのが投資でもあります。今回はどういった仕組みなのか、実際に投資の一つとして取り組むにはどのような始め方があるのか、取引におけるメリットやデメリットなどについて紹介していきます。

オプション取引の特徴

オプション、と聞くと皆さんはどんなサービスを思い浮かべますか?自動車を購入する時なら標準品以外の装備の取り付け、旅行ならば追加の現地ツアーなどでしょうか。そのほかにも食事や買い物など様々な場面で耳にする単語です。

何か追加サービスのようなイメージをしやすい「オプション」ですが、投資においては少し意味合いが異なります。一般的に「オプション取引」とは――➀あらかじめ定められた期日(満期日、権利行使日)に、②ある特定のもの(原資産)を、③今決めた価格(権利行使価格)で売買するという権利――を取引することを指します。

ある日にある商品を売買する――?それは「先物取引」ではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。それもまた少し違います。先物取引は、特定の商品について現時点で価格や数量などを定め、将来の一定期日に約束に基づいて売買を行う取引のことです。取引する人が商品を買いたい「買い方」であると仮定して考えてみましょう。買い方の先物取引は「ある時点である商品を決まった価格で買う約束をする契約」ですから、権利行使日に想定した価格と違っても必ず買わなければなりません。一方で、「オプション取引」はあくまでも「ある時点である商品を決まった価格で買うことのできる権利」をやり取りするだけなので、権利行使日に決めていた価格では割高だと感じれば、その権利を放棄してしまえばよく、実際に買う必要はありません。少し混同しやすいので、整理しておきましょう。

オプション取引と先物取引の違いモノの売り買いの瞬間には必ず「売る人」と「買う人」が存在します。オプション取引では、モノ(商品)の売り買いが実際に成立する将来の時点で、「売り手になるのが得か」「買い手になるのが得か」を予想し、それぞれの立場になる約束を「権利」として売り買いします。

オプション取引には、日経平均株価などを対象に取引所で取引されるもののほか、為替や金利を対象に取引所外で取引されるものなど様々あります。オプション取引をする時点では現物(原資産)を買うわけではありませんから、権利の買い手は比較的少ない資金で取引が始められます。権利の売り手になれば、相場が全く動かずに商品の売買では利益を上げられなくても、オプション価格である「プレミアム」が利益になることもあり得ます。また、株価指数や通貨を対象とするオプション取引を活用して、すでに保有する資産の値下がりや値上がりという価格変動リスクに備えるヘッジ手段としても使うこともできるでしょう。

オプション取引の仕組み

オプション取引は、ある時点において対象となる原資産の「売り・買い」の権利をやり取りするものです。売る権利を「プット・オプション(Put Option)」、買う権利を「コール・オプション(Call Option)」といいます。そして、それら権利の価格をオプション取引の「プレミアム(Option Premium)」と呼んでいます。それぞれに売る立場と買う立場があり、取引の種類は4種類あります(詳細は後述します)。

誰しも、相場の先行きは予測しがたいものです。将来、その相場が上昇しているか下落しているかといった方向感のみならず、その変動幅はどのくらいなのかといったことまで組み合わせると、予想は千差万別。その予測時点が到来するまで正解は誰にもわかりません。すでに資産を保有する人であれば、なるべくその資産の価値は毀損したくはない、あるいは価値を最大限に膨らませたいなどと思うでしょうし、これから資産を取得する人であればなるべく妥当な価格で手に入れたいと思うものではないでしょうか。

オプション取引は、足元の市場価格ではなく、将来の売買をあらかじめ決められた特定の価格(権利行使価格)で売り買いする権利を売買するもの。先行きが不安であれば、あらかじめ設定した価格で将来売るという「権利」を買うこともできますし、購入したい時に備えて将来決められた価格で買うという「権利」を手に入れることもできます。もちろん、将来への備えのみならず、相場を先読みし、積極的に利益を狙う手法としても使えます。例えば、原資産を保有せずとも将来売るという「権利」なら売ることができますよね。

 

オプション取引の種類

物の売り買いには必ず「売る人」と「買う人」がいます。さらにそれぞれの権利の売り買いを掛け合わせて、オプションの売買には4つの立場が存在することになります。簡単に図にすると以下の通りです。

売り買いの4種類

なお、オプション取引では権利を行使するかどうかは買い手のみが決めることができます。オプションの売り手は、買い手が権利行使すれば必ず応じなければなりません。それぞれを相場の先行きがどうなると予想する時に使うのか、とある商品のオプション取引を例に、見ていきましょう。

前提条件として……

 『将来、とある商品(原資産)を3万円で売買する権利をやりとりするオプション取引』

 『オプション・プレミアム(オプションの価格)は、1000円』と仮定します。

そして権利を行使する将来、つまり権利行使日がやってきた時の原資産の価格と➀~④それぞれの損益の関係を計算すると、以下のようになります。

四種それぞれの損益

どういう仕組みになっているのか、それぞれ➀~④の立場になって考えてみましょう。

➀コール・オプションの買い=「買う権利を買う」

取引する人:原資産が上昇すると予想する人が「コール(買う権利)を買う」

▷予想通り!▷満期日を迎えた時点で原資産が3万3000円に上昇していた場合

  • オプションを行使
  • 「満期日の市場価格-権利行使価格―プレミアム=買い手の利益」となるので3万3000円-3万円-1000円=2000円の利益が出る

▶予想が外れた!▶満期日を迎えた時点で原資産が2万7000円に下落していた場合

  • オプションを放棄
  • 買い手の損失はオプションの購入時に支払ったプレミアムのみなので1000円が買い手の損失となる
  • 権利行使か放棄かを選べるため、損失はプレミアムの額に限定される

②コール・オプションの売り:買う権利を売る

取引する人:原資産が上昇しないと予想する人が「コール(買う権利)を売る」

▷予想通り!▷満期日を迎えた時点で原資産が2万7000円に下落していた場合

  • 買い手がオプションを放棄
  • 売り手の利益はオプションの売却で受け取ったプレミアムなので1000円が売り手の利益となる

▶予想が外れた!▶満期日を迎えた時点で原資産が3万3000円に上昇していた場合

  • 買い手がオプションを行使
  • 「権利行使価格-満期日の市場価格+プレミアム=売り手の損失」となるので3万円-3万3000円+1000円=-2000円となり、2000円の損失が出てしまう
  • 買い手に権利行使されれば必ず応じなければならないため、損失額は市場価格に左右される(相場が上昇するほど、損失額は膨らむ)

③プット・オプションの買い:売る権利を買う

取引する人:原資産が下落すると予想する人が「プット(売る権利)を買う」

▷予想通り!▷満期日を迎えた時点で原資産が2万7000円に下落していた場合

  • オプションを行使
  • 「権利行使価格-満期日の市場価格-プレミアム=買い手の利益」となるので3万円-2万7000円-1000円=2000円の利益が出る

▶予想が外れた!▶満期日を迎えた時点で原資産が3万3000円に上昇していた場合

  • オプションを放棄
  • 買い手の損失はオプションの購入時に支払ったプレミアムのみなので1000円が買い手の損失となる
  • 権利行使か放棄かを選べるため、損失はプレミアムの額に限定される

④プット・オプションの売り:売る権利を売る

取引する人:原資産が下落しないと予想する人が「プット(売る権利)を売る」

▷予想通り!▷満期日を迎えた時点で原資産が3万3000円に上昇していた場合

  • 買い手がオプションを放棄
  • 売り手の利益はオプションの売却で受け取ったプレミアムなので1000円が売り手の利益となる

▶予想が外れた!▶満期日を迎えた時点で原資産が2万7000円に下落していた場合

  • 買い手がオプションを行使
  • 「満期日の市場価格-権利行使価格+プレミアム=売り手の損失」となるので2万7000円-3万円+1000円=-2000円となり、2000円の損失が出てしまう
  • 買い手に権利行使されれば必ず応じなければならないため、損失額は市場価格に左右される(相場が下落するほど、損失額は膨らむ)

最初に数字で示したものを縦軸に損益、横軸に原資産価格を入れてグラフに表すと、このようになります。オプション取引には「買い手」と「売り手」が存在しますが、買い手の損失がオプションのプレミアムに限られる一方、売り手の利益はオプションのプレミアム以上にはなりません。

四種それぞれの損益_折れ線グラフ

オプション取引の買い手は、思惑通りに相場が動けば、オプションの購入代金(プレミアム)の分だけ利益は少なくなるものの、利益を出すことができます。もしも予想が外れた場合でも、権利を放棄してしまえば損失は最初に支払ったプレミアムのみに限ることができます。

一方で、オプション取引の売り手は、損失が無制限に膨らんでしまう可能性があります。原資産の価格が動かなかったり、プレミアムとして受け取った代金の範囲内での価格変動だったりであれば、オプションを売ることによる利益を手にすることができます。ですが、思惑が外れてしまった場合は、買い手が権利を行使することによって損失が発生します。オプション取引の売り手に証拠金が必要とされるのは、そのためです。

オプション取引を始めるには

オプション取引を始めるには、証券会社などで取引口座を開設しなければなりません。オプション取引の専用口座開設には一定の金融資産を保有していることなど、独自の要件などがある場合もありますので、詳細は各口座を設定している証券会社などに問い合わせてみてください。

ご自身の希望するオプション取引の取り扱いのある証券会社などの金融機関が見つかったら、口座開設の申し込みをします。証券会社などからの交付書面、同意書などの書類の送付や、必要書類の返送、証券会社などによる審査を経て、取引口座の開設となる流れが一般的です。

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オプション取引のメリット

オプション取引では、投資家の予想次第で多様な局面で利益を狙うことや、保有する資産の価格変動リスクの回避などが可能です。取引を活用できれば以下のようなメリットを得られるかもしれません。

損失を限定することができる

オプションの買い手は自らが有利な場合にのみ、権利を行使することができます。予想が外れてしまった場合、オプション取引なら、権利を放棄し、オプションを買い付けるために支払ったプレミアムのみに損失を限定することができます。

(売り手は買い手が権利行使すれば必ず応じなければなりませんので、損失が際限なく拡大する可能性があります。売り手に損失が生じた場合にも取引を確実なものとするために、オプション取引の売り手は証拠金を預託する必要があります。)

相場の下落局面など、どのような局面でも利益を狙える

オプション取引は様々な組み合わせが可能で、相場がどのような状況でも利益を狙うことができます。オプションそのもので相場の上げ下げを予測して利益を狙えるほか、オプション同士や先物、現物資産との組み合わせで、いろいろな相場環境に合わせ多種多様な投資戦略を練ることが可能です。

レバレッジを効かせることができる

オプション取引は「デリバティブ(金融派生商品)取引」のひとつです。(デリバティブ取引については、こちらの記事もご参照ください。「デリバティブ取引とは 先物やオプションなど種類を解説、失敗時のデメリットに注意)ですので、一定の証拠金を入れることで、自己資金よりも大きな取引ができるレバレッジ取引が可能です。小さな金額で何倍もの価値の金融商品を取引するため、大きな利益を狙うことができます。証券会社によっては現金のほか、株式や投資信託などを証拠金として使えるなど、資金や資産の効率をより高められるとうたうところもあります。

取引を行う際に最も大切なことは、相場を予測すること。株式投資などの取引と同様、オプション取引でも相場が上昇するのか下落するのかを考えます。そしてもう一つ、ある水準で中立になるというのもオプション取引では投資戦略に役立つ予測です。また、振れ幅がどの程度なのかの予測も重要です。オプションの価格であるプレミアムには、相場の動く早さや変動幅などが響きます。方向感と振れ幅の2軸の視点に気を配りつつ、相場を予測して、オプション取引をうまく活用していきましょう。

 

オプション取引のリスク

資産運用の選択肢を広げうるオプション取引ですが、買い手にも売り手にも相応のリスクはあります。前述した部分と重複する箇所もありますが、それぞれ改めて確認しておきましょう。

「買い手」になるリスク

オプションを買う際にはプレミアムを支払わなければなりません。プレミアムはそのオプション取引に対する売り手と買い手の需給に応じて変化します。オプション取引には様々な種類、銘柄があります。プレミアムには相場の動く早さや変動幅などが響くと前述しましたが、一番大きな要素は原資産価格と権利行使価格の関係です。現在の市場価格より権利行使価格が将来高くなるのか安くなるのか、それに加えて、将来の価格変動への期待が加味されていきます。

権利行使日にオプションに価値があれば利益を出すことができますが、そうでない場合は権利放棄となり、支払ったプレミアムの分はそのまま損失になります。また、利益を上げられた場合でも、原資産そのものに投資・運用するよりも支払ったプレミアムの分だけ利益は少なくなります。

「売り手」になるリスク

オプション取引では買い手が権利行使した場合、売り手は必ず応じなければなりません。損失には上限がないため、相場の急激な変動などにより投資元本よりも大きな損失を被る可能性があります。

オプションとは「権利」。そして、あらかじめ決められた期日に、あらかじめ定めた価格で原資産を売り買いする「権利」のみをやり取りするのが、オプション取引です。現物取引ほどの資金がなくとも取引を始められることもありますが、やり取りは相応のリスクを負います。実際の取引では、コールやプットを単独で売買して利益を求めるばかりではなく、相場環境に応じ、ご自身の資産状況に応じたリスクの調整も重要になります。実際にオプション取引に取り組む際には、相応の知識を備え、投資するそれぞれの商品の仕組みはきちんと理解する必要があるでしょう。

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著者名

QUICK Money World 片岡 奈美


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