「犠牲祭」を乗り切れるのかーー。一部の外国為替市場関係者が心配していた注目イベントが、大きな混乱なく通過した。27日の外為市場でトルコリラは対円で18円を割り込み17.76円まで売られる場面があったが、売り一巡後は18円台を回復する動きとなっている。
トルコリラは一時対ドルでも大きく売られたが、欧米株式相場は軒並み上昇しており、「トルコ発のリスクオフ」とはなっていない。イスラム教の祝祭日である犠牲祭は今年は21~24日。休み中は流動性が低下するため、トルコリラ相場のボラティリティが上昇しやすいとの指摘も出ていたが、犠牲祭の最中も休日明けの取引でも、パニック的な動きは見られなかったもようだ。
SMBC日興証券の野地慎氏は28日のレポートで、「トルコ一国の問題は世界経済にとって軽微」だが、ドル高(米国金利上昇)が続けば、ブラジルや南アフリカなどにも波及し、「結果として先進国経済への負のインパクトも大きくなる」可能性はあると述べている。
現時点で「ドル高と新興国通貨安のスパイラル」を回避できているのは、パウエルFRB議長の「High pressure economyを志向するようなジャクソンホール講演」によって「米国市場はドル安、株高の典型的なリスクオンと化した」ためであると指摘。そして、「ドルインデックスが大きく下げるなかであれば、自ずと新興国通貨の対ドル減価も止まり、ドル安に連動したコモディティ価格の上昇がむしろ新興国市場で好感される」とし、「トルコリラの下落など『取るに足らない』動きとなって当然である」と述べている。(丹下智博、池谷信久)
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