【NQNニューヨーク 川内資子】12月1日のニューヨーク外国為替市場で、ドルが対主要通貨での下げ基調を再び強めている。ドルの総合的な強さを示すインターコンチネンタル取引所(ICE)算出のドル指数は91台前半と2018年4月以来の低水準を付けた。新型コロナウイルスのワクチン普及への期待や主要経済指標の底堅さを背景に、流動性が高くリスク回避時に買われやすいドルを売る動きが優勢となった。ドル指数への影響が大きいユーロに対してドルが直近の安値を下回ったのも、ドル安が勢いづくとの見方を促した。
■製造業の回復は続きそう
1日発表の11月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は57.5となった。約2年ぶりの高さだった10月からは低下したが高水準を維持した。項目別では「顧客の在庫」が約10年ぶりの低水準となった一方、「受注残」や「輸出向け新規受注」が上昇した。キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ハンター氏は「新型コロナの感染再拡大の製造業の生産への影響は限られており、在庫水準の低さや海外需要の堅調さを踏まえると今後も回復は続きそう」と分析する。1日は中国やユーロ圏の指標も改善し、世界的に株式相場が上昇。投資家がリスクを取りやすくなり、ドルが売られた。
米連邦準備理事会(FRB)による追加の金融緩和観測もくすぶり、市場では「ドル指数は18年2月に付けた安値(88.25)を目指す」(ブラウン・ブラザーズ・ハリマン)との声が増えている。パウエルFRB議長は1日に米議会で証言し、米経済回復について「道のりは長い」と慎重な認識を示した。経済支援について「不足するリスクの方がやり過ぎるリスクより高い」と主張した。前週公表の11月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では資産購入策について活発な議論をしていたのが明らかになり、早期拡充の思惑が高まっている。
■「ユーロ高・ドル安基調が続くのは当然」
ドルは対ユーロで9月に付けた直近安値を下回り、1ユーロ=1.2077ドルと18年5月以来のドル安水準を付けた。もともと市場では「ユーロ圏と米国の実質金利の差をドルの対ユーロ相場は織り込んではおらず、ユーロ高・ドル安基調が今後も続くのは当然にみえる」(ソシエテ・ジェネラルのキッド・ジャックス氏)との見方は多かった。名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利は米国の低さが目立っていた。世界的に名目金利が低いなか、米国はほかの国・地域に比べてインフレ圧力が相対的に強いため実質金利が低くなる。この状況は簡単には変わらないとの見方がドルの先安観につながっている。
スコシア・キャピタルのショーン・オズボーン氏は「ドルがここ数カ月の取引レンジを明確に下回ったことで、ドルは対ユーロで1.25~1.26ドルまで下げる余地が一気に広がった」と指摘する。オシレーター(振幅)系のテクニカル指標では短期、中期、長期のすべてがドル安・ユーロ高のトレンドを示すという。年末にかけてドル指数の一段の低下を見込んでおいた方がよさそうだ。